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2回目は、司法の役割とは何か、日本の司法はどうあるべきかをいろいろな角度から考えるための本を選んでみた。
「米国の司法は積極的。日本の司法は消極的」とよく言われる。その二項対立をきちんと考え直す上で有益なのが、東大教授のダニエル・フット氏の『裁判と社会 司法の「常識」再考』(溜箭将之訳、NTT出版)だ。筆者は米連邦最高裁長官のロークラークを務め、日本で法律実務の経験を積んでもいる。
日米の司法の積極性の差を生み出す制度的な要因(最高裁裁判官の選び方や、裁判官の補助役=日本では調査官、米国ではロークラーク=のあり方の違いなど)を分析しつつ、日本の裁判所も、法規範を解釈するだけでなく形成・創造してきた広い領域があることに目を向けさせてくれる。それは、立法や行政との関係ではなぜ消極的だったのか、という問いを研ぎ澄ますことにつながる。
同じ著者による『名もない顔もない司法 日本の裁判は変わるのか』(NTT出版)については、GLOBE11号の「著者の窓辺」で紹介したことがあるので参考にしていただきたい。
どんな人が裁判官に選ばれ、どのように昇進していくのか。キャリア裁判官の人事制度やそれを取り仕切る最高裁事務総局に焦点を当て、豊富なデータを盛り込んだ『司法官僚 裁判所の権力者たち』(新藤宗幸著、岩波新書)が今年8月に出版された。
司法官僚は、最高裁判事の最大の給源になっている。今年12月から半年の間に5人の最高裁判事が定年を迎えるが、うち2人が、司法官僚出身だ。その後任にだれを、どのような理由で任命するかが、鳩山政権の大きな課題だ。
GLOBEの特集では、最高裁が、特に刑事事件でどこまで積極的に事実関係の問題に踏み込むべきか、あるいは踏み込めるのか、という問題を取り上げた。この問題を考えるのに参考になるのが、最高裁調査官時代、事実認定に踏み込んで高裁の有罪判決を見直す判決・決定に複数かかわった法政大教授の木谷明氏の『刑事裁判の心 事実認定適正化の方策』(法律文化社)だ。
社会秩序維持に軸足を置く裁判官と無辜(むこ)の不処罰を重視する裁判官とで、事実認定にどのような差が出るのか。自白の任意性(自白調書が被疑者・被告人を騙したり脅したりするなどして作られたものではないといえるための判断基準)をめぐる最高裁の考え方を改めてもらうために筆者が立てた「遠大な計画」とは――。
検察官が起訴状に書いた「起訴事実」が本当にあったと判断するのかどうか。いつ裁判員になってもおかしくない市民にとって、決して他人事ではない問題を考えるための道筋が、率直な筆致で説かれている。
特集では、最近、最高裁の判決に少数意見がつくことが増えてきたことを報じた。
これに対し、1980~90年代の最高裁判決がほとんど全員一致で、反対意見が出されることはめったになかったことを指摘しているのが、関西学院大教授の丸田隆氏が書いた『裁判員制度』(平凡社新書)だ。
筆者は、裁判員制度の導入に反対する議論として「日本人の国民性に合わない」というものがあったことに触れ、「日本人の裁判官ほど、いままで述べてきたような日本人の国民性を体現している国民はいないと言って良い」と述べる。そして、裁判官の頂点に立つ最高裁のあり方に触れる。丸田氏は「ワンパターン化されない、多様なものの考えを持つ人物で構成されているとすれば、反対意見が付される頻度が高いはずである」と説くのである。
東大教授・長谷部恭男氏の『Interactive憲法』(有斐閣)は、「司法審査によって守られるべき政治過程とは何か」「違憲の条件とは何か」など、憲法や司法を根っこから考える設問を、それぞれ章を立てて突っ込んで考えている。読みこなすにはかなりレベルの高い本だが、憲法を担当する助教授の女性と、その父親や友人との会話体で書かれており、読みやすくなっている。
米国や日本の最高裁判例が随所に引用されており、例えば第11章では、外国人の公務就任権をめぐる最高裁大法廷判決での泉徳治裁判官と滝井繁男裁判官の反対意見をはじめ、それぞれの個別意見を読み解いている。
21世紀に入ってからの日本の司法のあり方を考える上で避けて通れない文献は、2001年に公表された、司法制度改革審議会意見書だ。ネット上で読める。
http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/report/ikensyo/index.html(HTML版)
http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/report/ikensyo/pdf-dex.html(PDF版)
特集でも触れたように、意見書に象徴される司法の役割への期待の高まりが、最近の最高裁の議論の活性化・積極化の背景にはある。
審議会の会長だった京大名誉教授の佐藤幸治氏の『日本国憲法と「法の支配」』(有斐閣)の特に第四章「司法権と司法改革」からは、司法改革を支えた問題意識、審議会意見書の背景にある思想を読み取ることができる。
(山口 進)