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司法の役割とは---選ぶ側のあり方は

[Part1]

選挙訴訟の個別意見が国民審査の結果に響いた

大統領に指名された最高裁判事の支持率などを探る世論調査が、米国にはある。調査会社のギャラップは「三権のほかの二つの部門で調査するのだから、司法についても行うのが当然だ」という。

 

日本では世論調査は一般的ではないが、その代わり、米国にもない、最高裁裁判官の国民審査の仕組みがある。
これまで人々の関心は薄かったが、今年8月の国民審査では、異変が起きた。
仕掛け人は弁護士の升永英俊。5月25日付のGLOBE16号に「どの裁判官が、一票の格差を合憲と考えるかを知ったうえで、国民審査権を行使すべきだ。そうすれば、裁判官たちも、有権者の意思を直接知ったうえで、一人一票の問題を判断できる」と寄稿した。その後、7月下旬から8月の審査当日まで、全国紙を中心に意見広告を出稿した。

国民審査の結果、07年の判決で衆院選の一票の格差を合憲とした涌井紀夫と那須弘平の2人の判事に×がついた割合は、7.73%と7.45%。ほかの7人は6.00~6.96%だった。さらに東京都では、2人が11.26%と10.95%だったのに対し、ほかの7人はいずれも8%台と、より差がついた。

那須は、今年9月の参院選の定数訴訟では、「違憲」派に転じた。「定数訴訟に対する態度」というような単一の争点で国民審査を論じることには、憲法学者から批判的な意見もある。ただ、個別意見を比較すること自体が国民審査を実質的に機能させることは確かだ。

升永英俊弁護士

その大前提として必要なのは、自由に意見が書ける土壌だ。定数訴訟で「一人一票」の立場から反対意見を書き続けた福田博は96年、同じ反対意見の弁護士らと非公式な打ち合わせをすると、「(官出身の)あなたがこんなところにいて、本当にいいんですか」と言われた。「民」出身者は違憲説、キャリア裁判官など「官」出身者は合憲説、という色分けが固定化していたころ。
反対意見案を書くと、調査官に「確立した(合憲の)判例に反しています」と削除されたこともあるという。

今世紀に入って、キャリア裁判官出身でも泉徳治や近藤崇晴のように、「一票の格差は違憲」という反対意見を書く判事も出てきた。調査官による足かせも以前に比べれば軽くなったという。
福田は、「格差があっても平等」という現在の最高裁の多数の態度は、米連邦最高裁が1896年に出した「黒人と白人は分離しても平等」という、いまでは悪名高い「プレッシー対ファーガソン」判決の考え方と共通しているとみる。
米国では判例が変わるまで約60年かかった。日本でも、反対意見が多数になるには同じくらい、つまりあと20年くらいは必要かもしれない、と福田は思っている。

(文中敬称略)

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