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司法の役割とは---日本の現場で

[Part2]

「おかしい」と思う感覚が先見性を支えていた

「グレーゾーン金利を取り返します」という広告がちまたにあふれている。

グレーゾーン(灰色)金利とは、利息制限法の上限を超えて借り手が支払った金利のことだ。その息の根を止めたのは、06年の最高裁第二小法廷判決だ。灰色金利について、「事実上強制されていれば有効とは言えない」と判断した。
借り手はやむを得ず払っている場合がほとんどだから、この判決は灰色金利を実質否定した。灰色金利で貸し付けるのが常態だった業界に、激震が走った。

その2年前。滝井は、別の訴訟で、同じ考えを補足意見として示していた。
この時の法廷意見は、4人全員一致で借り手側を保護する結論だった。ほかの3人も、裁判官や検察官、外交官出身ながら柔軟な思考の持ち主だった。
しかし滝井はそれだけでは満足せず、「借り手は本当に自由意思で、任意に灰色金利を支払っているのか」という点にクギを刺した。

それは、「観測気球」だった。
「必ず同じような事件が来る。ただ、いまは法廷意見(全体の結論)にしようと強く主張して、ダメだと言われても困る。補足意見で頭出しをして、みんなの意見を聞きたい」。滝井はそう思っていた。


「灰色金利」に関する04年の最高裁第二小法廷判決は、灰色金利が有効となるための2条件のうち、第1条件「業者が借り手にきちんと書面を渡している」について判断。4裁判官全員一致で、書面が不備なら灰色金利は無効とした。滝井裁判官(上のイラストの左端)は加えて、不利益を避けるためにやむなく支払っている場合は、そもそも第2条件「借り手が任意に支払った」が満たされず無効、と補足意見を述べた。 inspired by Dick Bruna

 

 

 

 

「観測気球」に対し、高裁レベルでは判断が分かれた。弁護士や学者からは賛成する声が出る一方、強い反対は出なかった。そうした反応のなか、06年判決は2年前の補足意見の論理に全員が同調した。

04年判決の2年後。メンバーは入れ替わっているが、同じ第二小法廷が、灰色金利の第2条件(任意性)について、「借り手が不利益を避けるために、灰色金利の支払いを事実上強制されている場合も、灰色金利の支払いは無効」と判決。5裁判官の全員一致(Unanimous)だった。 inspired by Dick Bruna

 

先見性のある少数意見を生み出すものは何なのか。滝井に聞いてみた。
「これはおかしい、と思うから書く。何かを直接変えようという気持ちはない」。従来の判例や多数意見を「ちょっとおかしい」と思ってみたら、いろいろなことが見えてくる、というのだ。
弁護士時代から、最高裁判決を、いつも批判的に読んでいた。しかも、大きな問題で全員一致が多く、気味が悪いと感じていた。「いったいどんな議論がされたのか」と不思議だった。
だから、少数意見で議論の中身を知ってもらいたいという気持ちも強かった。「みんな(少数意見で)しゃべらないと。しゃべる中で、当事者も、議論されていることがわかる」

滝井が任官する前年の01年、内閣の司法制度改革審議会は意見書で、裁判所が三権の一翼として「期待に応えてきたかについては、必ずしも十分ではなかったという評価も少なくない」と明記。特に立法や行政に対するチェック機能の充実が必要だと強調した。
これに象徴される司法の役割への期待の高まりが、最高裁の議論の活性化の背景にはある。

(文中敬称略)

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