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――中国のGDPが来年には日本を抜きます。日中の力関係にどんな変化がありますか。
寺島実郎 中国に香港、台湾、シンガポールを加えた「大中華圏」でみると、08年にすでに抜かれている。5.1兆ドル対4.9兆ドルだ。中国はネットワーク型で発展している。アジアは外資の投資を引き込んで生産ネットワークを作り、欧米へ輸出している。その中核にあるのが、「大中華圏」の躍動だ。アジアは(日本という先頭を飛ぶ雁を後続が追いかけて発展する)雁行型からネットワーク型へ発展の方式が変化しつつある。

だから、日本人も過剰に自信喪失する必要はない。ネットワーク型の構図のなかで日本企業も中国に進出し、工場を造り、生産を拡大している。一方で、中国発で世界的に活躍しているブランドや企業はまだほとんどない。技術にしても、エレクトロニクスから自動車まで、日本のレベルにはまだ育っていない。だから、経済規模で抜かれても中国を過大視する必要はない。中国の指導者もよく分かっている。
――鳩山首相が唱える東アジア共同体について、どう考えますか。
寺島 欧州連合(EU)の発展過程を振り返ってみよう。非常に段階的に進化していった。最初は50年代に石炭や鉄鋼の生産にかかわる共同体として出発し、仏独の和解を経て、しだいに経済連合体として進んでいった。日中韓を中核にした共同体の構築を考えるなら、共通の利益を生む具体的なプロジェクトを積み上げていくことが重要だ。
――例えばどんなプロジェクトですか。
寺島 環境は共通利益を生む大きな材料だ。例えば、森林。9月の国連気候変動サミットで胡錦濤(フー・チン・タオ)国家主席は温室効果ガスを森林で吸収するため、40万キロ平方メートルを植林する、と言っていた。日本の面積が約38万キロ平方メートル。それ以上に植林をする、というのだから、大変なことだ。日本は工業化のなかでも約7割の森林比率を保ってきた森林先進国。日本の蓄積した技術を生かし、植林事業を一緒にやれる可能性がある。プロジェクトを考え出す構想力と、一緒に取り組む過程が大事だ。
共同体は、具体的な利益の積み上げから。力を合わせて問題を解決した経験を共有しながら、匍匐(ほ・ふく)前進する。
――米国との関係は。
寺島 「親米入亜」。20年後には世界のGDPの4割をアジアが占める時代がくる。今の25%から大幅に増える。世界の成長センターとなるアジアとの信頼関係の構築は、米国との基盤強化につながる。
米国が言うG2論は、新しい世界秩序のマネージメントの中核を米中とする、という考え方だ。その源には、新しい全員参加型の世界秩序作りに中国を引き込んでいかないといけないという問題意識がある。それは米中同盟のなかで日本が孤立するというゲームではない。日米中のトライアングルのなかで日本は適切に判断し、いかに主張するかが問われるゲームだ。「親米入亜」には、米国に過剰に依存するのではない情報基盤や戦略的な構想力が必要。相当な覚悟がいる。
(09年9月28日、東京で。聞き手=吉岡桂子 経済グループ記者兼論説委員)