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――日米欧の企業経営者らが参加する「三極委員会」に、今年から中国とインドが正式にメンバーとして入ったそうですね。
小林陽太郎 加盟条件にしてきた「先進工業民主主義国」に中国がなるのを待つとなると、いつになるか分からない。一方、中国を入れずに世界の政治や経済を議論しても、意味がない。加盟条件はそのままにしつつ、実態に合わせて入ってもらった。ゲストとしてはこれまでも招いていたのが、正式メンバーとしてもっと要職に就いている人に来てもらいたいという声が強まったからだ。

――この会議は日本経済が台頭してきた70年代初め、欧米の呼びかけで日本を交えて始まりましたね。
小林 冷戦下の経済安定のカギとして始まった。三極といえば、中国やインドはアジアに含まれるが、中印ともすでに地域を超えたグローバルパワーになっている。たとえば中国から具体的に誰に出席してもらいたいか、などと話し合うときにも、欧米のメンバーが独自のルートを持っていたりする。
中国は先進国中心のG7のメンバーではないが、G20の広がりのなかでは多くの国とそれぞれに密接な関係を持っている。それぞれの国が自分は中国を分かっていると思っている。こうした国々の人々に向かって日本がアジアを代表して話すのはなかなか難しい。
日本はG7の中で、世界第1位、第2位の経済大国である日米関係を軸にずっとやってきて、それ以外に関係を広げるのをおろそかにしてきたのではないか。日本は意識して、世界の国々と理解しあえるコミュニケーション能力を強める必要がある。
――日本は世界第二位の経済大国の看板を、まもなくおろすことになります。
小林 日本人の間では「一人あたりのGDPでみると中国は日本の10分の1である」などという議論が出てくるだろうが、総合的な国力でみれば中国はすでに米国に次ぐ存在感を持っている。しかも、人口の規模を考えると、中国は米国を抜いて経済規模で世界首位になる可能性を持つ2位だ。米国で高等教育を受けた若者も多く、高いレベルの知性を備えた人も今後さらに増える。米国にしてみれば、一目を置く存在になる。G2という表現をどう解釈するかは別として、米国がマークする相手は中国だ。
日本はおもしろくないと言っていても仕方ない。人口の減少に悲観的になるだけでなく、いかに成熟した国になるか、前向きに考えるべきだ。中国は底辺の貧しさを思えば、まだ20年は量の拡大を中心にやらざるをえないだろう。中国の人々が日本から学ぶものがたくさんある、と言っているのはまんざらお世辞でもない。日本は質を磨き、真似をしたいと思われる部分を多く生み出していく努力が必要だ。
個々のビジネスでいえば、中国にGDPの規模を抜かれたのでどうこう、ということはほとんどないのではないと思う。どうやってモノを作り、企業を育てカネをもうけるか。汎用品の組み立ては大きな市場と安い労働力を持つ中国へ出て行く。では日本に何を残すか。ずっと繰り返してきた議論だ。それぞれの企業がぎりぎりのところで取り組み、答えを出していくしかない。
もっと重要な点は、人間力だと思う。ビジネス、外交、研究、ジャーナリズムでも、あらゆる分野で世界レベルで丁々発止とやっていける人が日本には少なすぎる。外国語の問題もあろうが、世界の情勢を視野に入れて議論をできる人間を育てるには、どのような教育がふさわしいか、考えるべきだろう。
――中国はGDPで日本を抜くことを、それほど大げさにとらえまいとしている様子です。
小林 一つには、すでに基本的なパターンはセットされたと考えているからだ。軍事、政治、経済とも飛び抜けた力を持つ米国を、中国が20~30年で抜くことはないにしても、これから数十年は米国と中国が世界のさまざまなことを決定づける役割を果たしていく、と。中国の内外でそう考える人が多くなってきている。こうした全体状況の認識に立てば、放っておいても存在感は高まるのに、世界第2位の経済大国になるからといって自分たちでことさら騒ぐ必要はない、と思っているはずだ。
次に、国際社会で存在感を増し、経済規模では世界第2位になったとしても、中国の多くの人々は国内の問題が大変深刻だ、と本気で考えている。外向きにリーダーシップをとって誤解や摩擦を生むリスクを抱えるより、国内問題に集中しようと。
――鳩山政権が唱える「東アジア共同体」構想をどう考えますか。
小林 20年前、「三極委員会」でアジア共通の価値観を問われたタイの代表が「アジアに共通の価値観はない。日本をアジアだとはみていないし、日本のリーダーシップも期待していない」と答えた。「脱亜入欧」でやってきた日本は、こうした意見の存在も視野に入れながら、アジアとのつきあいを深める努力したほうがよい。日本は謙虚な気持ちと勇気を持ってアジアの中に再び入っていくべきだ。
(2009年9月24日、東京で。聞き手=吉岡桂子 経済グループ記者兼論説委員)