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[Webオリジナル]北京共識	-中国の時代-

[第9回]「米ドル依存から脱却を リスク分散に多元化が必要」

余永定・中国社会科学院教授、前中国人民銀行通貨政策委員

 

――人民元の国際化をどのくらいの時間軸で考えていますか。

余永定 数十年。まず、中国との間の貿易決済で使う。近隣国から始めて、しだいに範囲を広げていく。外国の政府や企業などに債券を人民元建てで発行してもらう。中国がかかわる二国間や多国間の通貨スワップで人民元を使ってもらう。アジア地域で使われる通貨になることが国際化へ向けて不可避なステップだと考え、主にアジア各国に働きかけ、取り組み始めたところだ。

Yu Yonding 中国社会科学院教授。同院世界経済政治研究所所長、中国人民銀行通貨政策委員などを歴任。60歳。

ただ、人民元の国際化は、外貨との自由な兌換を認め、中国と他国の間で資本の自由な移動を認めることと密接にかかわる。中国の誰もが予見できる将来において、中国経済は人民元の自由な兌換や資本の自由な移動を認められる状態ではないし、そうすべきではないと考えている。自由化すれば投機資金が自由に出入りして、国内のマクロ経済政策がうまく働かなくなる恐れがある。中国の手が届かない外国市場で人民元が乱高下するのも困る。人民元の国際化には国家全体の信用とよい評判もいる。長い道のりだと承知している。

――やれることからやると。

 国内の金融システムをもっと自由化し、人民元の為替レートも柔軟性を高めなければならない。銀行など金融機関の経営体質を強化し、債券や株式市場の改善も必要。やらなければならないことは山のようにあり、それを一歩一歩やっていこう、というのが中国政府の姿勢だ。

――世界銀行のロバート・ゼーリック総裁が「今後10~20年で人民元は金融市場における一大勢力となる」と発言するなど、人民元の国際化への関心は強まっています。

 これまで政策論議の「後部座席」にいた人民元の国際化に、中国内でも以前より関心が強まっているのは確かだ。

――なぜですか。

 今回の金融危機は、米ドルが国際準備通貨として支配する現行の金融システム内に中国があることの脆弱性をあぶりだした。中国は、2兆ドルの外貨準備のうち1兆ドル以上を米ドル建ての資産で保有しているため、米国の危機対策に(中国の政策も)強く影響を受けざるをえない。米国は極端な金融緩和政策をとって通貨供給量を増やしており、ある程度のインフレを許容するだろう。これは実質的に、中国が保有する米ドル資産の価値を減らすことにつながりかねない。こうしたリスクを減らすためにも、外貨準備を構成する通貨を多元化していくことが必要だし、貿易などで人民元を利用してもらうことも必要だ、と考えている。

――外貨準備の多元化が必要だと。

 米国はあまり議論したくないテーマかもしれないが、外貨準備の多元化は日本にもメリットがあるはずだ。中国は、経済規模は大きくなったがまだ途上国であり、人民元の国際化へ向けて歩み始めたばかり。米ドルの座に取ってかわろうという話ではない。

一方、米国は今、はっきりと本音をみせている。中国に国債を買い続けてほしい、と。人民元の切り上げも前ほど言わなくなった。金利を安く据え置いたまま国債を発行して財政資金を調達し、米国の景気回復に役立てようと考えている。しかし、米国の財政は大赤字になりつつある。インフレの懸念もある。鋭利なナイフの上でバランスをとっているようなものだ。米ドル危機が突然、出現する恐れを排除できない。
世界経済というボートが壊れて、みんなおぼれてしまうのは困る。各国が対話しながら有効な対応を考え、協力する必要がある。

――中国は何をしますか。

 経済成長を維持する。失業も、受け入れられる範囲にとどめる。これが第一。次に、投資と輸出に頼った経済成長モデルを内需中心へ切り替えていく。もう一つ大事なことはアジアでの金融協力だ。地域のカネを地域で回す。危機時に外貨を融通しあう仕組み「チェンマイイニシアチブ」を強化・拡大したのはよかった。米ドルが多く使われているアジアで、人民元がより使われるようにしていくのも、国際的なマネーのアンバランスを徐々に是正していくのには効果がある。

(2009年8月13日、北京で。聞き手=吉岡桂子 経済グループ記者兼論説委員)

 

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