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――環境NGOからみた経済危機の中国への影響は。
楊東平 中国政府が打ち出した4兆元(約52兆円)の景気刺激策のなかには、大型インフラの建設など公共事業が多く含まれている。景気回復を急ぐあまり、汚染をまき散らしたり、資源を浪費したりするおそれがあるとして、経済危機前なら認められなかったようなプロジェクトにゴーサインが出るのではないか、と懸念している。

4兆元の投資の環境面での監督をしっかりするように、中国の25の環境NGOが連名で3月、全国人民代表大会(国会に相当)と全国政治協商会議(国政への諮問機関)に対して発議書を出した。大型公共事業は必ず情報を公開し、決定過程に住民が参加する、というルールを守ってほしいと強く訴えた。
――現状はいかがですか。
楊 民間で手に入れられる情報が限られるので、きちんとした件数ではいえないが、大変心配な状況だ。例えば08年の四川の大地震の被災地復興の狙いもあって、彭州市に大型の化学工場の建設計画が進んでいる。これは経済危機前に公害の恐れから周辺の市民が反対してきた案件だ。公害が懸念される重化学工業の工場を豊かになった沿岸部からまだ貧しい内陸部へ移す動きの一環なのだが、内陸でも公害には敏感になっている。それが、景気回復の名のもとに一気に進んでしまうのではないか。
同じく内陸の雲南省・怒江などに予定されていた大型ダムの建設は、中央政府がとめた。しかし、これだって温家宝(ウェン・チア・パオ)首相がかつて建設を否定していたのに、経済危機後に地元政府が進めたいと再び言い出した。いずれにしても油断ならない情勢で、中国人の環境意識の高まりでここ数年ストップしていた案件が景気回復の名のもとに動き出しかねない。環境NGOとしては関心をゆるめてはならないと考えている。
――中国は2010年までの5年間で、同じ経済成長に必要とするエネルギーを2割、排出する汚染物質を1割減らす目標を掲げています。これへの影響は。
楊 06年まではむしろ悪化していたのだが、07、08年とエネルギー効率は上がり、汚染物質の排出削減も進んだ。しかし、景気回復が非常に大きな課題となった09年はどうだろうか。目標達成の難易度が確実に高くなったと思う。景気回復のために、「家電下郷」(家電を農村に)運動などで、家電や自動車の普及を後押ししているが、安くて省エネ効率の悪いものが普及するのではないか、これも心配だ。
――気候変動問題には環境NGOはどうかかわっていますか。
楊 国内の公害問題への関与のようにはいかない。94年に我々「自然の友」が中国初めての環境NGOとして発足したころは、青少年の環境教育から始めた。その後、情報公開や政策決定過程への公衆の参加、環境裁判の支援やマスメディアへのアピール、全人代などへの提案など運動の幅を広げてきた。
気候変動にもNGOとして問題意識を公表したりはしている。ただ、非常に厳格な政府間の協議を必要とし、高度に外交的な交渉事でもあるから、我々NGOの関与は限られるだろう。
(2009年8月10日、北京で。聞き手=吉岡桂子 経済グループ記者兼論説委員)