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――中国の対外投資が急増しています。08年は金融も含めれば550億ドル。3年で4倍以上に伸びました。目的は。
王志楽 資源、技術、市場。例えば、浙江省の服飾会社はある米国企業を買収し、米国の販売網を手に入れた。資金があっても自分で構築すると時間がかかるが、買収すれば一気にネットワークを張れる。買った会社から、経営管理手法も学べる。中国企業は企業買収によってグローバル企業になるための「時間」も買っている。

中国に買われる企業にもメリットがある。まず、雇用を維持できる。例えば、中国企業がドイツで破産した縫製設備会社を買収し、立て直した。現地の政府から、技術はあるが経営状況が悪いほかの会社も、もっと買ってほしいと頼まれているそうだ。
日本の案件でいえば、04年の上海電気集団による工作機械メーカー、池貝の買収がベンチマークだと思う。日本の古い工場を買って日本人を雇い、労使うまくやっている。経営状況も悪くない。それに、中国に買われた側は、中国市場を手に入れられる。
――失敗例はないのですか?
王 上海汽車による韓国の双竜自動車の買収は成功とはいえない。買収後も経営を再建できないまま、双竜は破綻してしまった。上海汽車は双竜の労働組合の強さをよく理解していなかった。労組と雇用主の関係は国によってさまざまだ。ドイツは雇用主と労組が一緒になって対話しながら経営を進めるが、韓国は対立しがちだ。
こうした問題を含めて、各国の事情への理解が足りずにうまくいかない場合もある。経験不足によるものだ。中国企業は海外展開にあたっては、利益の追求だけでなく企業の社会的責任(CSR)や環境への配慮や責任が必要であることも、もっと理解する必要がある。海外に進出した日本企業を通じて日本を理解した外国人は多い。中国もやがてそうなることが予想されるだけに、大事なことだ。
――国有企業である中国アルミが、英豪資源大手のリオ・ティントから株式買収を拒まれたとたん、中国当局が中国に駐在するリオの社員をスパイ容疑で身柄を拘束しました。意趣返しに見えます。
王 商業的な秘密情報を、わいろを贈って正常ではない方法で入手した罪だ。中国政府は規模の成長だけでなく、質や科学的な発展を重視するようになった。中国政府にとって「反腐敗」は極めて重要だ。外資は、「中国企業だってやっている」とは言わないで、良い商業環境を築くよう共に努力してほしい。
―― 一方で、中国の世論は外資系企業に中国企業が買収されることに対して、以前より反発するようになっています。外資をみる目が変わったのでしょうか?
王 変わったね。中国の人々は改革開放からずっと、外資に対する尊敬の念があった。外資はすばらしいもので、中国企業とは差があると。それが経済成長とともに、そんなにすごくいいものでもないぞ、と思い始めた。
外資の側にも問題が出てきた。中国政府の有形無形の恩恵に甘えて、最低賃金すら守らず、ひどい労働条件で働かせたり、自国では考えられない公害を引き起こしたり、賄賂を贈ったりしている。中国人や中国企業が批判するのは当然だ。
ただ、中国企業は偏狭な民族主義ではなく、本物の愛国主義に基づいて競争してほしい。企業どうしの契約や交渉上のもめごとを、国家や民族の間の問題に格上げし、世論を味方につけてゲームに勝とうとするのはよくない。これも、中国企業自身が海外に進出し、逆の立場に立つことが増えれば、理解できるようになるだろうが。
――中国には資金もあるし、外資はもういらないのでは?
王 税金など様々な政策で外資の特別扱いは減るかもしれないが、中国政府が外資を歓迎する意向は変わっていない。マネー以外にも、技術や管理、雇用など得るものが大きいからだ。中国は米国のように、対外投資も外資の受け入れも両方大きい国を目指している。中国に進出した日本企業はよくやっていると思うが、昔より社会的責任も問われる。省エネや環境など変化が速い中国の政策に、ぜひ着いてきてほしい。
(2009年8月14日、中国北京で。聞き手=吉岡桂子 経済グループ記者兼論説委員)