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――金融危機後、米国など先進国経済が疲弊する一方で、中国の存在感が増しています。
張蘊嶺 確かに中国の力量は上昇した。世界がマイナス成長に陥るなかで、中国の経済成長は続いている。輸出が減っても政府の景気刺激策で内需を引っ張り、09年第2四半期から回復に向かい始めた。

内陸の広西チワン族自治区を視察してきたが、経済情勢は悪くなかった。金融危機が発生したなんて思えないほどだ。10%を大きく上回って成長を続けている。公共事業の効果が大きい。
様々なコストが上がった沿岸部から工場も移転してきていた。今回の景気の回復過程での成長率は、内モンゴル自治区や青海省など内陸の都市のほうが高い。中央政府の支援が効いている。そして、中国の需要が世界経済の回復に貢献している。
――こうした経済力を背景に、中国は国際社会でより発言権を強めようと動いています。
張 国際通貨基金(IMF)の改革にも積極的に発言している。国際金融システムは1945年以降、第二次世界大戦後に先進国が作った体制だ。経済成長が著しい中国やインドが発言力を増そうとしているのは自然だ。国際経済を語る場として、G7からG20の動きも自然な流れだ。
――日米欧の企業経営者や有識者らで作る「三極委員会」にも今年、中国はインドとともに正式に加盟しました。
張 70年代の冷戦時代に反ソ連で始まった会議だ。いわゆる民主主義の国でなければ入れなかった。だが、中国抜きの会議は意味がないという声が近年高まってきた。日本ではアジアを代表しきれなくなったのだ。「民主国家」という条件はそのままにして、中国の加盟を認めた。大変な変化だ。中国の声をみなが聞きたがっている。
文明的な価値から考える欧州の国々でさえ、商売のためか中国への対応が現実に根ざしたものに変わってきた。
利益から物事を考える米国は、より現実的だ。その米国にとって、日本の勃興は経済上だけの話だった。軍事的には同盟国であり、米国の管理下で何をするか予測できた。しかし、中国は同盟国ではないし、民主的ではないと彼らは思っている。西洋に対して東洋文化を代表する存在でもある。しかも、13億人だ。いったい何が起きるか分からない、と。
だからG2を言い出した。いろいろ責任を負わせようということだろうが、中国はG2だのなんだのと言われて政策を変えるようなことはしない。中国は経済の規模は大きくても質や効率はまだまだ。資源の浪費体質や環境問題も深刻だ。中国は自分のペースで対応していく。
――途上国とはいえ、大国としての責任もあるでしょう。
張 国際社会からの過分な要求には応じられない。例えば気候変動。先進国は中国へと汚染を多く出す工場を移してきた。中国の温室効果ガスの排出量が著しく増えた理由の一つでもある。中国は国際協力を推進して環境技術を移転してもらったうえで、自分の能力に応じて排出削減を進める。「以我為主」。自分の能力に応じて主体的にやる。環境問題は国内の住民からの要望が年々高まっている。中国政府も対策を非常に重視している。しかし、将来の発展を縛るような国際的な義務は負えない。
中国は日本の経済規模を超えても一人あたりではまだまだ。主流の研究者や政府の関係者はそれがどうした?と思っている。13億人の現代化には、悩ましいことがいっぱいある。長期的に平和的に発展していかないと、実現できない。
――アジア共同体構想については。
張 私は社会科学院のアジア太平洋研究所長として、東南アジアとの対話をずっとやってきた。地域協力が有意義であることは、どこの国の誰もが分かっている。一部の分野では、中国、日本、韓国、ASEAN(東南アジア諸国連合)で協力を始めたものもある。しかし、共同体はできていない。
EU(欧州連合)の統一市場、統一通貨のようにはいかないなあ、と感じた。EUはドイツをコントロールして二度と戦争しない、という決意で進んでいった。アジアはもっと接点が広いし、おおまかだ。ASEANが分散しているうえ、ニュージーランドやオーストラリア、インドまで共同体構想に入ってきた。違いがありすぎる。途上国も多い。
中国は自由貿易協定(FTA)などを通じて20カ国の隣国と関係を改善し、(共同体を作らずとも)問題を解決してきた。従って、メコン開発を一緒にやろう、鉄道を造ろう、とか具体的なことを積み重ねていくほうが、先に共同体ありきよりよいのではないか、と考えるようになった。
(2009年8月11日、北京で。聞き手=吉岡桂子 経済グループ記者兼論説委員)