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[Webオリジナル]北京共識	-中国の時代-

[第3回]「人民元の国際化への道のりは長い。しかし、恐れはしない」

張凱華・中国中央電視台(CCTV)「貨幣戦争」制作チームリーダー

 

――黄金、英ポンド、米ドル、ユーロ、円、ドルの興亡を描いた番組「貨幣戦争」が話題になりました。

張凱華 今の中国は60、70年代の日本と似ているんじゃないかな。猛スピードで経済が発展していることを誇りに思う気分がある。一方で、この先未来はどこへいくのだろうか、中国の国際的な地位やイメージはどうなるのだろうか、そんなちょっと矛盾した気持ちが混じり合っている。

通貨をめぐる攻防は、各国の国際的な地位や経済力全体を表現している。中国人が抱える気持ちとフィットするテーマだったと思う。07年には「貨幣戦争」という本もヒットしたよ。

 

――人民元の国際化の道のりをどう評価しますか。

 人民元がいつ国際的な地位を確保できるかは、中国の経済と深く関係している。英ポンドから米ドルに基軸通貨が移るまで、すごく長い時間がかかった。60年あまりだろうか。日本円は60年代に羽ばたき始めて、20年間は力強く地位を上げた。ユーロはまだ10年。中国経済は高成長を続けているものの、貧富の格差や市場の規律など経済の根本的な部分がもっと健全にならなければ、通貨を規制する管理の手を緩められない。資本の移動の自由化まで、まだまだ長い道のりだ。

しかし、道のりが長いことを恐れはしない。金融制度の改革の必要性も承知している。その道を順調に歩んでいく延長線上に、人民元の国際化もある。「桃李不言、下自成蹊(桃李もの言わざれども下自らみちを成す)」ということわざを知っていますか。
桃やスモモの花は何も言わないが、美しい花にひかれて人が集まり、その下には自然に道ができる、と。人民元も使いやすく、母国の経済が安定していると思われるようになれば、広く使われるようになるだろう。

 

――人民元が米ドルに取ってかわるのは?

 中国人民銀行の周小川総裁が、超国家通貨の意義を論文に書いて話題を呼んだが、米ドルを超えようという目的があってのことではない。米ドルは発行量が多すぎて、値下がりするおそれがある。国家的な経済利益からの合理的な選択として、多元化が必要だ、と言っているにすぎない。

中国が世界を助け、尊敬され、良いイメージを確立できれば人民元がそう(基軸通貨に)なる。経済力だけではできない。これは本当に長い道のりだ。

 

――番組で、アジア共通通貨にはふれていませんね。

 10年前はそういう議論がさかんなときもあった。でも、今はそうでもない。ユーロの歴史を振り返ってみてほしい。まず欧州は各国の市場が小さい。貿易が域内でさかんになれば、それぞれ別の通貨を持ったままでは取引にコストもかかる。域内で経済力が強く、自国の通貨にこだわっていたドイツが東西統一を優先し、マルクを捨ててユーロを支持した。民族統一があるから、マルクを捨てられた。ユーロ導入には飛び抜けた経済力を持つドイツをコントロールする狙いもあったから、ほかの国も納得できた面もある。

ひるがえって、アジアはどうか。中国も日本も自国の市場がそれぞれに大きい。また、中核になる中国、日本、韓国ともそれぞれ経済力が強い。自国の経済に自信がある国は、通貨を捨てられない。政治体制も違う。日本が飛び抜けているときなら「日本が譲れば」というようなこともありえたが、今は日中で競争している。ユーロの父と呼ばれるモンデールのように、実現に向けて奔走する経済学者や政治家もいない。そういうわけで、番組では扱わなかった。

 

――10年にはGDPで日本を抜きますね。2030年代に米国を抜くという試算もある。

 50年代、米英に追いつけ追い越せという目標を立てていた時代があった。まったくだめだった。その後、文化大革命を経て改革開放へ。2000年ごろだったかな、もうよく覚えていないが、イタリアのGDPを超えたころまではうれしかった。その後、フランス、英国、そしてドイツを超えた。だんだん規模で抜いてもどうということはなくなってきた。来年日本を抜いて2位になったとしても、非常に誇りに思うべきことか、というと、もうそうではないなあ。

人々が関心を持つ対象も刻々と変化する。全体の規模より、自分の収入や生活、社会保障の方が大事だ。米国を超えるにしてもまだ先で、そこまで周囲の人々は考えていないね。
それより日本の友人たちに伝えてほしいことがある。

 

――何ですか。

 中国が日本のGDPを抜いても心配はいらない。規模は変化する。できない隣人よりできる隣人の方がハッピーだ。どちらの国もうまく生活ができればいいのでは。それに競争するなら規模より科学技術力でやるほうが生産的だ。

中国はこの100年、難しいことばかりだった。達成感を得たのは、最近20~30年だ。世界とどう交流していけばよいのか。まだ「若い国」として何が最適かよく分からないが、対話しながら進めていきたいと考えている。それに、中国人13億人がよりよい生活をしたいと考えている。いろいろ問題はあっても、13億人がよりよい生活を求めることは大きな力を持つと思うよ。

(2009年8月11日、中国北京で。聞き手=吉岡桂子 経済グループ記者兼論説委員)

張凱華氏の略歴

Zhang Kaihua 
国営の中国中央電視台(CCTV)「経済半時間(30分)」の「貨幣戦争」制作チームリーダー。
37歳。

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