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――米中「G2」について、どう考えているか。多くの日本人はあまり愉快に思っていないようです。

チャールズ・フリーマン G2に愉快でない?ご安心を、G2なんてない。北京やワシントンの誰も、公式にはG2を支持するとは言わないだろう。それに、中国は米国よりもG2という概念により神経質だ。オバマ政権はアジアにおける同盟関係をやはり、米国の政策のコーナーストーン(基礎や土台)とみていると思う。
一方で、オバマ政権の中には、あらゆるグローバルな問題を解決するにあたって中国の要素があり、米国と中国がお互いに連携できれば、効果的にいろんな問題を決断できると信じている人もいる。たとえG2を公式には支持していないとしても、非公式にはG2だとみている人もいる。
気候変動問題で考えてみよう。もし米中が具体的に合意に至れば、国際的な多国間の枠組みにとって効果的な土台となるだろう。金融危機、北朝鮮問題、スーダン、イラン、そしてアフガニスタンやパキスタン問題まで同様に、中国は(問題解決に向けた)大きな構成要素となっている。そんな考え方だ。
私自身は、中国は特に米国との連合や提携に関心がないと感じている。だから非公式なG2を促進しようとする(オバマ)政権の人々はいずれ、失望すると思う。G2の概念はまもなくだめになるだろう。私が日本人で、G2を心配していたとするならば、安心するまでそう長くかからない。
――G3、すなわち米中EUの三極体制については?
フリーマン 私は米中欧の三者会議に何度か参加したことがある。政府間もあれば、非政府間もあった。米国は欧州との間で、中国との間よりずっと近い考え方を持っている。だから中国は米欧との三者会議には神経質になる。(その意味で)中国はあらゆる三者会議に神経質だといえる。
――日米中に対してもそうです。
フリーマン とても神経質だね。国際的には、中国を交えたすごくたくさんの非公式な三者会議があり、もっと公式なものにしようと努力しては、たいてい失敗してきた。
――中国の有識者にG2を問うと、気分は悪くなさそうだが、否定的でした。
フリーマン 我々はまだ発展途上国だ、と言うでしょう。鄧小平(トン・シアオ・ピン)は「タオ・コワン・ヤン・ホイ(韜光養晦)」(※注)と言った。「我々は時機を待ち、能力を隠しておき、長きにわたってリーダーシップをとるべきではない」と。これは確かに今でも国際問題における中国の多くの官僚たちの指針となっている。自分たちをリーダーと位置づけようとしない。中国人のビジネスマンの作法と同様に、目立って標的にされるのを避けるためだ。
――中国の経済の規模の力をどうみますか。
フリーマン 日本をもうすぐ抜く。米国を抜くには少し時間がかかる。この点について私がいつも思い起こすのは、中国は歴史的にはほとんどの時代、少なくとも世界の3割のGDPを占めてきた国である、ということだ。19世紀から落ち始めたが。中国のGDPの水準がまた大きくなっていくのは自然だ。インドも似た構図だ。
――日本は世界第2位の経済大国の地位を中国に渡すことで、どんな変化に直面するでしょうか。
フリーマン すでに変化は起きている。中国はすでに軍事、安全保障の分野で以前より自己主張するようになっているし、これからもそうだろう。
おもしろいことに今年になって、中国の権威者や研究者は国外における中国の利益やそれを守る必要性について話している。中国は、彼らがこれまでやってこなかった方法で国外にある利益を守る能力を構築する必要に迫られている。少なくともこの150年、そうした話はしていなかったはずだ。
中国はますます、自国の発展のための安全保障を米国には頼れないと考えている。代替物を必要としているのだ。日本はそうした(問題の)真ん中にいる。中国は米国や日本の同盟関係にすぐに挑戦してくるとは思わない。しかし、15年前に比べれば、より挑戦的に考えている。
――中国は国際機関や国際社会において、大国にふさわしい責任を果たすのでしょうか。それとも、自分たちは発展途上国と言い続けるのでしょうか。
フリーマン 責任ある役割を果たそうとするとは思わない。彼らは国内に多くの問題を抱えているので、国際問題でより大きな足跡を残そうと考えてはいないと思う。
国際通貨基金(IMF)などでより大きな出資比率や高い人事を得たいと考えているか、と問えば、それはそうだだろう。しかし、それは自己利益の実現のためであって、国際社会への責任感からではない。国際エネルギー機関(IEA)に加盟したり、世界貿易機関(WTO)のドーハラウンドを立ち上げようとしたりすることには、それほど関心がない。
――金融危機を経て中国は景気の牽引車として自信を持ち、米国は自信を失った?
フリーマン そうは思わない。米国は自信を失ったのではなく、謙虚になった。国際的な議論、とりわけ中国に関する議論についてはより謙虚だ。米国は、中国との関係において「こうすべきだ」というのは効果的ではない、ということがよく分かった。だから、中国を批判するよりも、公の場ではもっと敬意を払い、批判を聞こう、と。
中国に敬意を払うことが弱さだとは思わない。オバマ政権やワシントンを歩けば、中国封じ込めや台頭する中国による挑戦などという声は除去されている。中国は台頭し、いずれ米国と同じか近いぐらいの力を持つようになっていくだろう、それは必然だ、不可避だ、というような感覚が(代わって)ある。だから、いかに米国がこの「台頭」を機能させ、国際危機へ発展させない方法で(国際社会に)適応させていくか。それがより大きな挑戦だ。中国について米国を悩ませるようなことが起きれば、我々は声をあげる。しかし、対立する部分を強調してばかりではなく、中国の状況を理解する努力もする。
米国人、とりわけ米国の政策担当者は、アジアを理解していなかったし、中国も理解していなかった。それが今、中国への理解、政治的な理解についていえば、本当に進化してきている。政権内部だけでなく議会でも、微妙なニュアンスはまだどうか分からないが、中国の政治、外交、軍事それぞれがどうなっているかについて、以前よりしっかりと考えるようになっている。ほとんどの下院議員はつい最近まで中国をあんまり理解していなかった。彼らは本当に、中国は胡錦濤が国民をむちで打つように厳しく指導し、あらゆることを動かしていると考えていた。とても遅れた印象を持っていた。こうした印象から、ずいぶんと前進した。
また、北京の指導者は、今まさに特別な問題に直面してもいる。中国の大衆は(08年の)チベット問題のころから自分たちの指導者は危機においてあまりにも弱いのではないか、と感じている。だから、貿易にせよ台湾にかかわる安全保障にせよ、ダライラマをめぐる問題にせよ、米国が中国の指導者に圧力をかけるのにいい時期ではない。なぜなら、中国の指導者は米国の圧力に対して強く断固とした態度で応じなければならないからだ。
――長期的な問題として、アジアの経済は中国を中心として統合されていくと思いますか。
フリーマン 中国がアジアのハブ&スポークになるかどうか。アジアの経済は実体的にはすでにかなり統合されている。ただ、その統合が向いている先は、米国やEUといった地域外(への輸出)だ。アジア域内の消費に根ざした経済統合は、まだ時間がかかるだろう。米国の輸入が徐々に減っていくなかで、アジアのサプライチェーンがどうなっていくか。サプライチェーンを維持するための新しい消費がおきてくるのか。おもしろい課題だ。
我々はアジアの地域主義の行方について、いろいろ議論してきた。アジアで欧州統合のような可能性があるか、またアジアが本当にそのようなものを構築したいと考えているかどうかなども調査してきた。多くのアジアの人々は、一般的には中国の力強い成長はアジアに前向きだと考えているが、個々の国にとってはそうばかりではない。コインの裏表だ。
誰もが、米国ではない世界の経済成長のもう一つのエンジンが現れたことを好ましいと思うし、中国の成長に自分たちも一枚かみたい。中国の成長が地域統合を導く運転手だというような考えもある。しかし、同時にこの運転手が地域でより強くなればなるほど、拮抗する影響力として米国に期待する考えも出てきている。
米国は、中国の台頭は不可避だと理解する努力をしながら、衝突しないように、どううまく扱っていくか。歴史的にみても、あるパワーが台頭するパワーに直面する場合、これがおそらく最大の問題だろう。
(2009年9月15日、米ワシントンで。聞き手=吉岡桂子 経済グループ兼論説委員)
※注 「タオ・コワン・ヤン・ホイ(韜光養晦)」の「タオ」は、へんが「韋」、つくりが「舀」。