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「日本人は、能力の高さにもっと自信を持ってよいのではないか。パンアメリカン機で隣り合わせた米国防総省の空軍中佐が何度もそう問いかけてきた」
「西独フランクフルト始発の旅客機の機内放送では、英語、ドイツ語に加えて金髪のスチュワーデスによる日本語のアナウンスも聞こえてくる」
「日本商品と日本人の進出を目の前にして、アメリカやヨーロッパでは経済大国日本はまぎれもない現実として受け取られている」
40年前の1969年11月、朝日新聞に掲載された「経済大国への風当たり」の記事の一部だ。
前年にGNP(国民総生産)の規模が西独(当時)を抜いて非共産圏で2位になったばかりの時期。記事の見出しは「真の対等へ模索 緊張増す日米間 過渡期には“戦争”も当然」とある。誇らしげな思いと戸惑いが混じる時代の空気がにじむ。
以来ごく最近まで、日本の首相演説で「世界第2位の経済大国」のフレーズは「お約束」だった。
「世界第2位の経済大国になるとともに、安全で平等な社会を創りました」(09年1月28日、麻生首相の国会施政方針演説)
だが、09年9月24日、鳩山首相の国連総会の演説から、その文字は消えていた。
「2位の地位を渡すってのは、なかなか残念です。しかし、中国が成長してくれるってことは、我々にとっても間接的にはいいことにつながる。うれしさ悲しさ半々だ」
新日鉄会長の三村明夫は9月、訪問先の北京であった記者会見で「GDP日中逆転」を問われるとこう答えた。そして、「議論を集中すべきは、活力ある地域を自らの成長にいかに生かすか、だ」と続けた。
日中間の貿易はすでに日米間を上回る。バブルも心配される中国頼みの景気回復に危うささえ感じるほど、日本企業は中国市場へと舵を切っている。
米国は「G7」を、中国を交えた米中欧日の「G4」に再編することを検討中だ。中国の貯蓄と米国の消費の補完関係が世界経済のカギを握るという造語「チャイメリカ」(ニーアル・ファーガソン・ハーバード大教授)まで登場した。
米中央情報局(CIA)など16の情報機関で作る国家情報会議(NIC)が08年11月に発表した「世界潮流2025」は、中国を「今後20年間で世界で最も影響力を増す国」と位置づける。

だが、当の中国は慎重だ。むしろ、1人あたりのGDPは先進国の10分の1以下であることを強調、「世界最大の途上国」の看板のほうを好む。
胡錦濤(フー・チン・タオ)国家主席は9月の国連気候変動サミットで中国が直面する経済の困難を強調し、「(途上国と先進国の)共通だが差異ある責任の堅持」を念押しした。
金融面でも、人民元の自由な兌換を認めず、資本の移動も制限する。国際援助の場では、二国間の政治的な目的を優先し、いわゆる先進国の経済ルールとは距離を置く。
中国のある政府系研究所の研究員は明言する。「当然です。まだ貧しい。格差や民族問題もある。雇用を生む経済成長が社会の安定のカギだ。中国をほめ殺しして管理しようという、そんな戦略には乗れない」
大国と途上国を使い分けながら、自国に有利なルールを作ろうと動く。新しい「世界第2位」の経済大国が、そこにいる。