![]()
![]()
日本のクイックマッサージやリフレクソロジー業界は、曲がり角に来ている。現在の課題や将来の展望を、2人のコンサルタントに聞いた。(聞き手・内藤尚志)

「ブルーオーシャン戦略」と呼ばれる経営戦略がある。競合他社とシェアを争い、消耗を重ねる既存市場を「レッドオーシャン(赤い海)」と呼び、それに対して、新しい商品、サービスで市場を開拓し、そこで利益を得る「ブルーオーシャン(青い海)」を創るべきだと説く。
ブルーオーシャンの実践例が「てもみん」だ。「近くて、手頃で、安い」というのが新しい発想だった。
ただ、ブルーオーシャンをつくるまでは一気に進んだが、それをどう維持するかが、悩みどころだ。ブルーオーシャンをつくったら、競合他社が真似をしてくる。つくったあとも中身のサービスを変えていかないといけない。てもみんは、回数券制度をつくって、一回の単価を下げて何回も来てもらう戦略にした。3万円の高級エステのように単価が高くないから、ポイントや回数券制度で、客の囲い込みをはかっている。
最近の伸び悩みは、全体の消費傾向も影響しているだろう。クイックマッサージは生活していくうえでかならず必要なものでないから、家計の収入が減ると真っ先に削られる。ただ、安・近・短の手軽なサービスなので、家電のようにガクンと売り上げが落ちたりはしない。景気の影響は受けるが、むちゃくちゃ受けるわけではない、ということだ。
業界全体は、ここ3年ぐらい伸び悩んでいる。流通・小売業の宿命といえるが、大量出店すれば不採算店も出てくる。ただ、てもみんは、ちゃんと店のスクラップもしている。クイックマッサージは稼働率商売だ。
てもみんを脅かすビジネスモデルは生まれていない。息の長い商売になるだろう。
底堅いビジネスでもある。良い立地で、コンスタントに展開していけば良い。スポーツクラブも一気に施設が増えたが、投資額が大きいので、競争激化でやっていけなくなったところも出てきて、コナミなど大手数社に集約されつつある。これに比べて、クイックマッサージは参入障壁が低く、数坪の土地があれば店を始められるから、投資額が小さい。どれだけの収益率でビジネスを回せるかがポイント。サービスをまねてくるところは絶対に出てくるから、勝ち続けるのはもう一段、もう一段のブラッシュアップが必要になる。
先に駅ナカなどの好立地を抑えられれば、ブルーオーシャンを守る障壁になる。フランチャイズ(FC)にしたほうが収益率は上がるだろうが、直営に比べてスタッフの技術の統一が難しくなるので、サービスは悪くなるおそれもある。ビジネスの仕組み化は、もっとできるはず。この業界は、技術の仕組み化はできているが、多店舗展開の仕組み化は未熟。そういう意味では成長の余地がある。
この不況で経常利益率10%でていれば、小売りモデルではかなり良いほうだ。ただ、これが30%ならみんな参入する業界になるし、5%なら苦しいから撤退する。適度に儲かっている、ということなので、これから新規参入が相次ぐとは考えづらい。
昔のヘアサロンや床屋と似ている。世の中からなくならないビジネスなのだが、まだ個人経営のままで、商社など大資本が進出してこない。商社や投資ファンドが参入しないのは、現時点ではそれだけのうまみがないから、とも言える。

クイックマッサージ業界は96年ごろから広がってきた。04~06年ごろに急成長したが、その後は成熟期に入って、一店舗あたりの売り上げも下落し始めている。
この業界の特徴は、サービスの差別化が図りにくいこと。価格競争にならざるを得ない。
業界が成長した一番の理由は、パソコンの普及。目の疲れから、肩や腰の凝りを訴える人が増えた。また、女性の社会進出も大きく、この業界の客は3対7で女性のほうが多い。
クイックマッサージをやる店は、接骨院も含めて全国に5万~6万といわれている。市場規模は2300億円ぐらい。
みんな黒字は出していると思う。ほとんどの業者でスタッフが歩合制で、しわ寄せがスタッフに来ているとも言える。完全歩合制のほか、15万円とか一定額の基本給は保証されるが施術した人数に応じて増えていくタイプもある。
大手は5ブランド~10ブランドで展開している。それぞれヘッドスパとか整体とか特徴を分けてはいるが、単価は下がっている。健康茶やアロマオイルとかの物販や、オプションで単価を上げることをねらっている。
課題は、目的来店制をどうつくるか。業者は、会員制にしたり、家に帰ったときに店のオイルを使わせたりしている。レベルが高い業者は、自分のところの技術に独自の名前をつけて啓蒙している。
住宅街の店のほうが利益率は高い。街なかのように競争が激しくないから広告費が少なくて済むし、長時間コースを注文してオプションもつけるなど単価の高いリピーター客をとりやすい。街なかの店は、家賃や広告費が高いうえに、1回きりの客が多くて客単価が低い。
業界全体の市場規模は、ここ数年は微増傾向にあるが、不況で伸びが抑えられている部分もある。今後は体力のある業者しか生き残れない。大手が有利だ。客とのコミュニケーションが重要な商売だが、大手はそのノウハウを持っている。
10分1000円程度の料金のうち、スタッフの取り分は40%ぐらい。家賃、広告宣伝費、本部経費を考えれば、そんなに利益は残らない。また、スタッフの入れ替わりも激しいから、採用広告と教育の経費も馬鹿にならない。スタッフの技術統一は難しいし、客はこの点に一番不満を持ちやすい。大手の課題だろう。
出店場所も、もうなくなっている。コンビニといっしょで、店舗が過剰な状態。個人サロンが住宅地にまで進出している。エステもスパも増えているが、競合他社との差別化のために安くて軽いサービスを提供し始めていて、それがクイックマッサージともかち合う。だから市場規模が急激に伸びる見込みはもうない。微増で伸びていくだろう。
クイックマッサージ人口自体は増えている。新規の客は減っていない。ニーズはある。50~60代が受けるものと思われていたが、最近は勉強疲れで中学・高校生も来ている。池袋の「リラクの森」のようなテーマパーク化も始まっている。
ただ、客の来店頻度は落ちている。財布のひもがかたくなっているからだろう。固定客の来店頻度が、1カ月に1.3回だったのが1.2回ぐらいになっている。クイックマッサージが飽きられてきたわけではないと思う。
しばらくは価格競争が続くだろう。つまり、低位安定状態だ。でも血みどろのシェア争いはしないだろう。この業界は、経営者同士の横のつながりが強くて、なぜかみんな仲が良いから、すみ分けていくのではないか。