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「もむ」という仕事 世界の大人も子どもも

[Part3] マッサージは進化し、世界中で融合した

浅井隆彦 マッサージ研究家

浅井隆彦さん

人間が二足歩行を始めて手の機能が発達したところに、マッサージという行為の源がある。動物の毛繕いは愛情表現であり、傷を治す行為でもある。
人間は、愛情を表し、痛みを和らげるために、手を使って体に触れた。その行為は自然発生的に広がり、次第にマッサージという医療行為の一つになっていく。

古代エジプトの壁画にもマッサージの様子が描かれている。記録も紀元前から残っている。
ギリシャの医師だったヒポクラテスはマッサージの効用を唱え、マッサージを含むギリシャ医学はエジプトやペルシャへと伝わった。
2世紀ごろ、ローマの医師も「健康を保つために植物油を使って毎日マッサージすること」と記した。帝国の拡大に伴い、ローマ医学のマッサージは中近東へ広がった。

インドでは、約5000年前から、アーユルヴェーダ医学体系の一つとしてマッサージが始まった。薬草を温かいゴマのオイルにブレンドして肌に直接塗り、全身を強くさする。その後、中国の漢方医学と融合。仏教とともにタイへも伝わった。

日本には、中国に古くからあった「導引按摩(あん・ま)」が4~5世紀に伝わった。もともとは自分でやる体操法だったが、8世紀ごろには人にもんでもらう按摩術へと変化し、江戸時代、手の動きを取り入れた日本独自のものへと受け継がれた。
鍼灸(しん・きゅう)も奈良時代に中国からもたらされ、江戸時代には日本独自の管鍼術が生まれた。仏教伝来とともに僧侶が各地を巡ることで、温泉の効用も説かれた。

中世ヨーロッパでは一時、マッサージの研究が下火になったが、ルネサンスを機に、医療分野に本格的に応用されるようになった。
16世紀にはフランスの外科医がマッサージの方法と効用について提唱し、再び光があたるようになる。
オイルを使った近代マッサージの原形となったスウェーデン式のマッサージは医師によって19世紀に広まった。手のひらを肌に密着させ、オイルで表面をさする。19~20世紀初頭にオランダの医師らによって世界各地に広がっていく。

日本では、18世紀末にかけて按摩の手法が体系化されていった。
日本にヨーロッパからマッサージが入ってきたのは明治時代。軍医・橋本乗晃によってもたらされ、これが外科療法後の回復療法として導入された。同時に、江戸時代から民間で行われてきた指圧が明治に入って、米国の整体術やカイロプラクティックなどと融合。大正期に入って「指圧法」が誕生した。
戦後には「あん摩マッサージ指圧師」と統合された名称になった。
近年は、西洋医学が及ばない領域をカバーする代替医療の台頭で、様々なマッサージが、リラクゼーションや健康保持の観点から注目を浴びている。

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