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[Webオリジナル]製薬の未来を語る

[第9回] 日本と欧米のワクチンギャップ、ポリオでも


 

ワクチン行政をめぐる日本と欧米先進国とのギャップ。その影響は、他国では使えるワクチンが日本では使えず、病気にかかるという問題にとどまらない。より安全なワクチンが使えなかったり、使い方が中途半端で病気を制圧しきれなかったりという課題がある。

その典型がポリオ(小児麻痺)だ。

まず、日本と他の先進国で使われているワクチンはまるで違う。日本は毒性を弱めた生きたウイルスを口から飲むことで免疫をつける「生ワクチン」を使っているが、多くの先進国は、生きたウイルスが入っていない「不活化ワクチン」を注射している。

ポリオの生ワクチンは、不活化ワクチンに比べて予防の効果は高い。だが、専門家の間では、250万人に1人ぐらいの割合で、実際の麻痺につながる副作用が起きるとされている。

一方、不活化ワクチンが原因でポリオの麻痺が起きることはない。このため、「自然の感染が確認されない」として「撲滅宣言」をした先進国の多くで、安全性の高い不活化ワクチンが使われている。

WHOは2000年に、日本を含む西太平洋地域について撲滅宣言をした。だが、日本では「生ワクチン」の予防接種を続けているためにポリオにかかる本末転倒の現象が起きている。


なぜ日本は「生ワクチン」を使い続けるのか。国内で唯一、製造・販売が認められている財団法人の日本ポリオ研究所が、04年に厚生労働省から治験のやり直しを求められるなど、開発が遅れているためだ。にもかかわらず、厚労省は海外メーカーの製品の導入に動かない。

使い方も中途半端だ。世界保健機関(WHO)は3回の接種を推奨しているのに、日本では2回しか投与しない。国立感染症研究所は「(日本では)2回投与方式によってポリオ患者がいなくなったというところから、そのまま2回接種方式で現在に至っている」(同研究所ホームページ参照)と説明している。だが、感染研自身も認めるように「海外では3回以上接種となっているところがほとんどで、我が国の2回投与方式は例外的方法」(同上)なのだ。

中途半端な予防接種しか受けられない環境にいると、自らが発症しないでも、感染を広げる役割をしてしまう可能性がある。感染症の種類によっては、流行地域で感染した旅行者が、次の渡航先で感染を広げる「ミツバチ」の役割をすることもある。実際、ポリオが撲滅されたはずのインドネシアで05年に流行が問題になっているが、こうした旅行者が感染を広げた可能性もある。

いったんはワクチンで病気がなくなったはずの国に感染者が渡航すれば、そこで流行を引き起こす危険性もある。「はしか」では、日本から感染した子どもが米国に渡航して、周囲の米国人が発症し、「はしかの輸出国」との批判を招いた苦い経験がある。

個人輸入によるワクチンの接種をしている「ザ・キング・クリニック」(東京都渋谷区)の近利雄院長は「予防接種には自己防衛だけではなく、集団の保健という意義もある。たとえば、ポリオは、200人が感染しても発症は1人だけで、残りは気づかないうちに感染を広げている。国際化した今、日本国内の感染コントロールだけではなく、世界規模の視野で感染症を予防する姿勢が必要です」と指摘している。

(松浦新)

 

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