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[Webオリジナル]製薬の未来を語る

[第6回] 「インフル用ワクチン製造、持続可能な仕組み必要」

リノ・ラップオリ ノバルティス・ワクチンリサーチセンター長


 

新型インフルエンザの感染拡大をうけ、欧米の主要ワクチンメーカーは、新型インフルエンザ用のワクチン製造を本格化させている。しかし、途上国を含めた世界全体にワクチンを安定供給するための仕組みづくりはこれからで、懸案が山積しているという。なにが問題なのか。大手製薬メーカー、ノバルティスのワクチンリサーチセンター長のリノ・ラップオリ氏に、当面の課題を聞いた。
(7月2日、イタリア・シエナで、聞き手・田中郁也)

 

リノ・ラップオリ。1952年、イタリア・シエナ生まれ。ノバルティス・ワクチン部門の研究開発を統括している。

―― ノバルティスをはじめ、大手メーカーは、新型ワクチンの製造を開始しました。ただ、インフルエンザ・ワクチン事業は、いろいろな課題を抱えている、と聞きました。

リノ・ラップオリ パンデミック(世界的大流行)に対応できるだけのワクチン作りのシステムができあがっていないのが、一番の問題です。現行のシステムは持続可能とはいえません。ひと握りの先進国を除けば、世界全体に十分なワクチンを行き渡らせることができないのです。インフルエンザワクチンは、メーカーにとって利益をだすというより、損をすることが多く、むしろ設備を閉鎖する流れになっていました。一方で、インフルエンザが大流行する可能性は高まってきています。

―― ノバルティスの場合、インフルエンザワクチンは、ここ数年、赤字だったそうですね。ほかのワクチンと、どこが違うのですか。

ラップオリ たとえばポリオは、毎年、変化したりはしない。一度、ワクチンを接種すればいい。ところが、インフルエンザのウイルスは、毎年変化していきます。毎年、新しいワクチンを作り変えなければいけません。とてもユニークで、ほかの感染症に比べて、非常に複雑で手間がかかります。一方、製造手法は、非常に古い技術をつかったままでした。なぜ、古い技術に頼ってきたか。大きな需要がみこめなかったからです。だから誰も投資しない。それで技術は60年間、変化しないままでした。


―― 持続可能な供給体制を整えるには、どのような仕組みが、必要ですか。

ラップオリ 途上国がワクチンを使うための仕組みを、世界保健機構(WHO)など国際機関を中心にして作り上げていくことが必要だと思います。より大量のワクチンを、いまより安い価格でつくっても、ビジネスが成り立つようにすることです。そうすることで、多くの命が救われ、しかも持続可能な形で、十分な生産能力を持てるようになる。パンデミックがおきても、すぐに対応することができます。

―― 新しい仕組みを作るうえで、WHOや各国政府、企業は、どんなことをしていかねばいけませんか。

ラップオリ 製薬メーカーと公的機関とが協調していくことです。まず企業の役目は技術革新を加速させることです。よりよい技術に投資し、公的機関に製品を供給していく生産体制を整えることでしょう。ノバルティスの場合、細胞培養方式でのワクチン製造の許可をEUから取得し、ドイツの工場で生産に入っています。この方式は、短期間で大量生産が可能で、米国でもノースカロライナ州にこの方式の工場を建設中です。米国政府が資金支援しています。また、ワクチンの効果を高めるアジュバント(抗原性補強剤)の開発を続けており、この分野の先頭を走っていると自負しています。

一方、公的機関の役割は、できたワクチンを世界全体に行き渡らせるようにすること、そのための資金を確保する方法を考えることです。先進国では、公的機関がワクチンを購入し、人々に供給します。途上国でも、こうした仕組みを作ることです。マラリアや結核については、議論が積み重ね、仕組みが整ってきましたが、インフルエンザワクチンでは、本格的な議論をしていませんでした。

―― これまで、なぜ議論がおきなかったのですか。

ラップオリ インフルエンザは、これまで途上国の病気とはみなされていませんでした。しかし、多くの途上国にとって、インフルエンザは実は、通年の感染症だったともいえる。だれもインフルエンザに気づかなかっただけなのです。しかし、いまはみんながインフルエンザウイルスの感染を気にしている。先進国、途上国、みんなが集まり、話し合う絶好の機会です。

 

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