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新型の豚インフルエンザの流行が世界で続くなか、抗インフルエンザ薬「オセルタミビル」(商品名・タミフル)の確保が重要になっている。先進国はスイスの製薬会社ロシュからタミフルを購入し備蓄している。一方、タイでは国営のタイ製薬公団(GPO)がオセルタミビルのジェネリック(有効成分が同じ後発医薬品)を製造している。ジェネリックで新型インフルエンザに立ち向かう戦略をGPOのワイティット社長に聞いた。
(6月30日、タイ・バンコクの本社で。聞き手・浅井文和)

―― ジェネリックの抗インフルエンザ薬を作り始めた理由は何ですか。
ワイティット 私たちは2006年から製造を始めました。理由は鳥インフルエンザ(H5N1)の流行です。タイでは06年までに17人が鳥インフルエンザで亡くなるなど、危機的状況でした。対策として抗インフルエンザ薬が必要でした。
―― 日本を含む先進国ではオセルタミビルは特許で守られていて、他社が勝手に製造できません。特許の問題はないのですか。
ワイティット タイではオセルタミビルの特許が登録されていませんから、問題になっていません。
―― どのように生産するのですか。
ワイティット インドの製薬会社ヘテロ・ドラッグスが作ったオセルタミビルの原薬を輸入しています。他に、中国の製薬会社からの輸入も検討しています。輸入した原薬を当社で加工してカプセルにしています。
―― タイで原薬を作ることはできますか。
ワイティット いま、試作をしているところです。製造には多くの化学反応の段階が必要で、容易ではありません。
―― これまでの生産量はどれくらいですか。
ワイティット すでに500万カプセル(50万人分)を製造しました。政府が厳格に管理して備蓄しています。このほか、200万カプセル分(20万人分)を原薬で備蓄しています。カプセルに加工するのは容易で、100万カプセルを5日以内に作れます。
―― 70万人分でタイの人口の1%程度です。十分でしょうか。
ワイティット 当面、これで十分だと思います。すべての新型インフルエンザ患者にオセルタミビルが必要なわけではありません。専門家が決めたガイドラインがあり、重症になるリスクの高い患者に使います。薬を使いすぎると耐性ウイルスが出る心配があります。
―― タミフルの日本での薬価は1カプセル約300円です。ジェネリックの価格はどれくらいですか。
ワイティット 政府への引き渡し価格で1カプセル40バーツ(約112円)です。日本より安いですよ。
―― 近隣国から抗インフルエンザ薬の供給を求められたら輸出もできますか。
ワイティット 製造能力は十分にあります。今のところ、そのような要望はありませんでしたが、求められれば輸出可能です。
―― タイでは国営のGPOがジェネリックを作っているのが特徴です。国営で製薬事業をする理由は何ですか。
ワイティット 薬は普通の商品と違って、常に倫理的な側面をもっています。たとえば、私たちは国内のエイズ感染者・患者が使う治療薬の主な供給元です。国民のために社会的責任を果たさなければなりません。しかし、私企業だと外国企業に株式を買収されるリスクがあります。薬を安く安定的に供給するには国営企業が必要です。