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インドの製薬産業の発展の背景には、政府の支援策や、研究機関の充実もある。製薬産業の中心地のひとつ、ハイデラバードにある国立のインド化学技術研究所のジル・シン・ヤダフ所長にその歴史と将来の展望を聞いた。
(6月18日、インド・ハイデラバードの同研究所で。聞き手・浅井文和)

――インドの化学と製薬産業はどう発展してきたのでしょう。
ジル・シン・ヤダフ インドは独立後、まず、旧ソ連の科学技術を導入しました。旧ソ連の技術支援を得て、公営のインド製薬公社(IDPL)がハイデラバードにつくられたのが1961年。このIDPLから多くの優秀な人材が輩出し、自らの製薬会社を興して薬の生産を始めました。これらの会社は他の国よりも安価に薬を作ることができました。先進国で使っている、複雑でコストの高い製造方法に工夫を加えることで、より単純で安い製造方法を考案したからです。高品質の化学製品を安く、大量生産できることがインドの強みです。
――人材育成策もあったのですね。
ヤダフ インドは数学や物理学に優れていますが、優れた化学者、特に有機化学者もたくさんいます。化学の国立教育研究機関があちこちにありますから。人材育成を含めて、化学産業が花開いた背景には、政府の支援策も大きかったと思います。
――この研究所の役目は何でしょう。
ヤダフ インドでは政府の科学産業研究協議会(CSIR)が39の国立研究所を所管し、積極的に研究を推進しています。その一つがここです。化学製品の製造法の研究開発などをしていて、試作品を作るプラントもあります。製造法の特許を取って国内の会社にライセンスもしています。この研究所からベンチャー企業も興っています。産業界との協力がうまくいっています。
――輸出で順調に発展してきたインドの製薬産業ですが、将来はどうでしょう。
ヤダフ 将来性は大いにあると思います。なぜなら、インドは人口が多い割には、世界の医薬品市場の中ではごく小さな市場だからです。今後、国内の医薬品市場がもっと大きくなる可能性があります。
――どのような種類の薬が求められていますか。
ヤダフ 糖尿病は治療を受けていない人が多く、薬のニーズが最も高いです。ほかに、高血圧の薬も重要です。
――インドは2005年に特許法が改正されて、欧米並みの特許制度になりました(「製薬の未来を語る」第1回インタビュー参照)。ジェネリック(後発医薬品)で成長してきた製薬産業への影響はあったのでしょうか。
ヤダフ 実際のところ、ほとんど影響は出ていません。医薬品の量も種類も減っていません。それまでにインドは十分な製薬技術を身につけましたから。
――欧米の大手製薬企業とインドの製薬会社との関係はどうなっていくでしょう。
ヤダフ 今後、相互の協力関係が伸びていくと思います。大手製薬企業にとって、薬の研究開発には巨額の費用がかかります。インドでは、基礎研究にしろ、臨床試験にしろ、研究開発が安いコストでできます。インドでの研究開発は魅力的です。