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[Webオリジナル]製薬の未来を語る

[第1回] 「ジェネリック製薬会社にとって今が好機」

アツル・ソプティ ランバクシー・ラボラトリーズ社長兼CEO(最高経営責任者)


 

「世界の薬工場」として医薬品の輸出が急速に伸びているインド。その成長のカギはどこにあるのだろうか。インド最大の製薬会社で、昨年、日本の第一三共の子会社となったランバクシー・ラボラトリーズのアツル・ソプティ社長に聞いた。(6月24日、インド・グルガオンの本社で。聞き手・浅井文和)

 

アツル・ソプティ 今年5月、 最高執行責任者(COO)から社長兼CEOに昇格した。2005年にランバクシーに入る前には、日印合弁の二輪車メーカー、ヒーロー・ホンダで取締役を務めた経験があり、日本の事情にも明るい。

――インドの製薬産業が近年、成長を遂げている理由は何でしょう。

アツル・ソプティ インドの製薬産業は、ひとつのシンプルな決定のおかげで成長してきたと思います。その決定とは、インドでは製法特許は認めるが、物質特許は認めなかったということです(注)。この特許制度によって、外国の大手製薬企業はインドから撤退し、地元の製薬会社が市場を開拓することができました。インドの大学には優秀な化学研究者がいます。政策と科学的な基盤が結びついて、インドの医薬産業は、ジェネリック(後発医薬品)を中心にグローバルなビジネス展開ができるようになってきました。重要なのは、インドにはとても良い起業家や実業家がいるということです。ビジネスの機会があればインド人は大変良い仕事ができると思います。

 

(注)先進国では、薬は物質特許と製法特許の両方で守られている。特許の期間内は、同じ成分の薬を他社が勝手に作ることはできない。たとえ全く違った製造方法で作っても許されない。一方、インドでは、薬の作り方に関する製法特許は認められるが、物質特許は認められなかった。先進国の会社が開発した薬もインドでは製法特許しか取れないため、製造方法さえ違えばインド国内の会社は同じ成分の薬を作ることができた。しかし、インドも2005年に先進国並みに特許法を改正して物質特許を認めたため、今後開発される薬の成分は特許で守られる。

 

――インドが輸出する薬の多くは、先進国の大手製薬会社と同じ成分の薬を、特許が切れた後から安く発売するジェネリックですね。

ソプティ ジェネリックに求められるのは十分な供給と、安いコストと、高い品質です。これが実現できるならば、良いビジネスができます。これまでも、安価な薬を求める世界中の政府や、民間保険会社、医療保険料を負担している人たちの後押しがありました。欧米の大手製薬会社の薬が米国で特許切れを迎えるのは、私たちがジェネリックで市場獲得に挑む好機です。これまでも、私たちは多くの製品に関して同様の挑戦をして、大変良い経験を積みました。

 

――ジェネリック産業にとって米国はどのような市場なのでしょうか。

ソプティ 米国は最高の市場です。その理由は、米国ではジェネリックを最初に販売申請した会社は、先発薬の特許切れ直後から180日間、独占的にジェネリックを販売ができるからです。これによって十分に利益を得ることができて、研究開発のコストを回収できます。今後、5年間は前途有望な市場でしょう。ランバクシーは米ファイザーと和解に達し、世界で最も売れている同社のリピトール(悪玉コレステロールを下げる薬)のジェネリックを2011年から米国で発売できることになりました。2014年に特許切れを迎える大型薬もあります。

 

――日本市場についてどう考えていますか。

ソプティ 日本は米国に次ぐ世界で2番目に大きな市場です。しかし、他国とは大変違う市場でもあります。日本では最高の品質、最高の包装、最高の仕上げが求められます。そのために特別な設備が必要です。日本のジェネリックの価格は他国に比べてそれほど安くないですが、求められる水準を満たすには、そうするしかないでしょう。

 

――将来の有望な市場はどこですか。

ソプティ 将来への大きな事業として、アフリカで特別プロジェクトを始めました。インドと中国の時代の後は、アフリカの時代です。英語をしゃべる人たちがいて、資源があります。

 

――ジェネリックだけでなく、独自の新薬の研究開発について聞かせてください。

ソプティ ランバクシーはオリジナルの薬を開発し、特許を得て発売する仕事を始めたいと望んでいました。しかし、ジェネリックの製薬会社としては、コストのかかる新薬開発に資金を使うのはとても難しいのです。多くのインド会社はオリジナルの研究開発は別会社で始めています。ただ、私たちは日本の第一三共と一緒に仕事ができるので、研究開発がやりやすくなっています。第一三共にとっても、研究開発にかかる時間やコストを減らせます。もっと多くの薬の候補物質や利益を、相互にもたらすと思います。

 

 

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