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製薬オセロゲーム 鎖国ニッポンと黒船と

[Part3]ジェネリックの「巨人」、日本上陸
変わるか特異な市場慣行

ジェネリック世界最大手、イスラエルの「テバ」は、昨年11月、胃腸薬のキャベジンで知られる国内中堅の興和と合弁会社「興和テバ」を設立した。来年5月に初めてのテバ製品(がん治療薬)を日本で投入する。

テバの年間売上高は世界全体で1兆円を超え、国内ジェネリック最大手の沢井製薬の20倍超。この巨大な「黒船」が、日本法人を設立したのは05年だが、これまでは原薬を輸入し、国内で販売する事業しかしてこなかった。

興和テバ社長の井上信喜は「日本市場は特殊だ。スケールメリットを生かして原薬は安く仕入れられても、他のコストが大きい。最終商品を圧倒的に安くはできない」と話す。なぜなのか。

まず、海外で大量に流通している製品でも、すぐに持ち込めない場合がある。「不純物の許容範囲を巡って、欧米当局に提出したデータがそのまま使えず、日本で試験をやり直した」(テバの開発担当者)

 

販売コストも違う。欧米は「既存の薬と同成分のジェネリックについて、製薬会社から改めて情報提供を受ける必要はない」という考えが主流。テバは、米国で6000億円以上を売るが「MR(医薬情報担当者)は一人もいない」という。しかし、医師がMRからの情報提供を重視する日本では、合弁会社もMRが必要で、興和から移すほか、新卒や中途採用する予定だ。

外見の美しさが重視されるのも壁の一つ。少しでも錠剤の色がくすんでいたり、包装がへこんでいたりすれば返品される。また、先発薬と同じ添付書類が使えないなどの規制もコスト増の要因だ。
それでも、世界2位のサンド(独)やマイラン(米)、アクタヴィス(アイスランド)など世界大手の日本進出が、ここ数年、相次いでいる。

大きな理由は、医療費を削減するため、政府が値段の安いジェネリックの普及に本腰を入れ始めたからだ。政府は普及率を、現在の20%弱から「12年度までに30%にする」という目標を07年に掲げた。

その一環として、昨春、医師が書く処方箋の様式を変更。「ジェネリックに代替してはならない」と判断したときのみ医師がサインするようにし、それ以外の時はジェネリックの使用を「標準化」した。
しかし、普及率は予想を下回っている。

日本ジェネリック製薬協会の会長、沢井弘行(沢井製薬会長)は「医師、薬剤師、卸業者も値段の安いジェネリックを扱うことの経済的なインセンティブが十分でないのが最大の問題」と主張する。
ただ、興和テバの井上は「日本のジェネリック市場は米国の10年遅れだが、普及率が3割を超えれば、後は短期間で欧米並みに普及するだろう」と期待する。認知さえ得られれば、患者や企業からの要望が一気に高まるとの見方だ。

さらに、高度なバイオ技術を要する医薬品のジェネリック「バイオシミラー」の時代に入れば、国境を超えた業界の大再編が起き、日本企業もそこにのみこまれる可能性が高い。

今年6月に国内で承認第1号が出たバイオシミラーは、後発品とはいえ、設備投資や治験の費用がかさみ、開発に数十億から100億円超の費用が必要だ。沢井は「日本の企業も規模が小さく、体力がないところは生き残れなくなる」と予言する。

(文中敬称略)

 

取材記者略歴

浅井文和(あさい・ふみかず)
1958年生まれ。 科学部、医療グループを経て編集委員。

清井聡(せいい・さとし)
1975年生まれ。 生活部などを経て大阪経済グループ記者。

松浦新(まつうら・しん)
1962年生まれ。 大阪・東京の経済部、 くらし編集部、週刊朝日などを経て特報チーム記者。

田中郁也(たなか・いくや)
1958年生まれ。 バンコク特派員、AERA副編集長などを経て 経済グループ兼GLOBE記者。

静物写真
───
小寺浩之(こでら・ひろゆき)
1965年生まれ。 雑誌編集者を経て静物写真の世界に。日本写真家協会会員。

編集協力
───
チャールズ・プレスティジキング Charles Prestidge-King オーストラリア国立大学

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