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ファッション・ビジネス ポスト00年代へ。ファッションはどこへ行く

[Part3]

個性化? 僕はなんだか、怖いな
高田賢三 ファッションデザイナー

photo:Toyokazu Kosugi

ここ20年くらい、ファッションのサイクルがどんどん速くなっています。ちょっと街を見ないと、すぐ取り残されてしまう。80年代ごろまでは、デザイナーが発表した服がそのままのトータルルックで流行したし、90年代はそれにスタイリストの手が加わった着こなしが手本になった。でも今の若い人たちは1人ひとりが自分の感覚で服を選び、それを組み合わせて、自分がファッションリーダーになったような気分で楽しんでいるようです。

ファッションの作り手の側も、変わっていかなければいけないと思います。80年代以後、僕のブランド「ケンゾー」も含めて多くのファッションハウスは大資本グループに系列化されて、デザイナーは企業家やマーケティングの方針を無視できなくなった。そのころのトレンドは、これみよがしなボディコンやぼろぼろのグランジルック。何でこれがいいのか理解できなかったし、そうした流れを自分で変えることもできませんでした。

最近人気のZARAとかH&Mなどの服は、安いのに信じられないくらい手が込んでいる。若い人たちは、それをプレタポルテとうまくミックスして着ています。

でも、よく見ると、すべてがロンドンのポートベロー市場で売っているような古着と全く同じレトロなデザインみたいで、ちょっと抵抗感がある。一見自由で個性的になったようなのに、実は均質化が進んでいるのでは、という不安も感じます。

ファッションが生活の中に溶け込んで日常化してしまい、特別に個性のある形や表現を必要としなくなってきたということなのかもしれません。でも僕は、それも何だか怖いな、という気もしています。

 

たかだ・けんぞう
1939年、兵庫県姫路市生まれ。鮮やかなフォークロア調の「ケンゾー」デザイナーとして世界的に知られる。93年、ブランドをLVMHグループに売却。99年、ブランドから退き、独立。

 


 

ピラミッド構造が台形になることはない

廣内武 オンワードホールディングス会長

photo:Toyokazu Kosugi

いま、ファストファッションには次々に風が吹いています。それは、私たちラグジュアリーブランドに対するアゲンスト(反発)もあるのではないか、と。

今からみれば、1年前はバブルと言えました。過度の出店や価格上昇を招いた部分もあるでしょう。それが急速に是正されようとしています。1年前より、お客さまの目線は1ランクも2ランクも下を向いている。この現象が、お客さまの数や買い上げ金額の減少に、かけ算で響いてきています。

ですが、風は一方通行に吹くものではないし、風向きも一定ではないと思います。 3月に、ミラノとロンドンへ行きましたが、人通りがすごい。ファストファッションの店だけでなく、高級ブランドの店にも活気がありました。オンワードが出資するブランド店も、改装でにぎわいを取り戻していました。価値判断の二極化が鮮明になっています。

ファッションはピラミッド構造ですから、その先端がすぱっ、と落ちて、台形になることはないと思います。品質が優れ、気持ちの高まる商品は当然、お客さまが欲しがるものです。退化することはありません。

高齢化が進み成熟した日本では、「巣ごもり」などと言わず、少しでも1500兆円と言われる個人金融資産を使ってもらうきっかけを考えたい。一部の百貨店の店頭で当社商品のリサイクルを行う引き取りを始めたのも、こうした狙いの一つです。海外では、買収したグローバルブランドで欧米を積極的に攻め、中国での企画、生産にも力を入れる。きっちりターゲットを絞り込んだブランドを、展開します。

 

ひろうち・たけし
1942年生まれ。早稲田大学卒業後、樫山(現オンワードホールディングス)に入る。97年から社長、05年から会長。昨秋には高級ブランド「ジル・サンダー」の買収をまとめた。

(文中敬称略)

取材記者略歴

伊藤裕香子(いとう・ゆかこ)
95年入社。経済グループで流通・食品業界を担当。

菅野俊秀(かんの・としひで)
民放勤務の後、95年入社。文化グループでファッションを担当。

高橋牧子(たかはし・まきこ)
専門紙記者を経て07年入社。ファッション担当の編集委員。

小杉豊和(こすぎ・とよかず)
GLOBE編集チーム写真担当。

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