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ファッション・ビジネス ポスト00年代へ。ファッションはどこへ行く

[Part1]

ハイファッションあっての安価な服
土屋アンナ モデル・歌手

photo:Toyokazu Kosugi

若い子たちにとって不景気の影響って、実はあまりないと思う。ハイファッションは手が届かないというのが本音。

かつてファッション誌のモデルというと、遠い憧れの存在だったけど、いまは読者との距離が近づいていて、モデルが着こなすスタイルをまねできるし、手も届く。そこにうまくはまったのが、その場で誰もが買えるシステムにした「東京ガールズコレクション」だと思う。

それに、今のファストファッションは値段が安いだけでなく、70年代や80年代のテイストを採り入れたデザインも多くて、ここしばらくみんながみんなカワイイ系、キレイ系できたところに飽きた子たちが刺激を求めて飛びついている面もある。

ただ、ハイファッションはやっぱり必要。仕事でいろんなブランドの服を着たけど、いい素材を手間ひまかけて仕立てた服には、安い服がどんなにがんばってもまねできない品とラインというものがある。それは若い子たちにも知って欲しい。

3年前、ロサンゼルスでアレキサンダー・マックイーンの赤いドレスを買った。約160万円もしたけど、あつらえたようにぴったり。自然と背筋が伸び、精神のステージも上がる。服の重さじゃない意味での“重み”を感じた。たとえ一生に何度も着られなくても私の宝物になる。

その価値が分かると、大切にしたくなる。次の時代へもつなげたくなる。マックイーンやジョン・ガリアーノといった天才たちが最前線で戦ってくれるからこそ、本当は絶対まねできないのに、それをトレンドと称して採り入れた手の届きやすい服も存在できる。
彼らが勢いを失うことは、ファッションのベースがなくなってしまうことだと思います。

 

つちや・あんな 
1984年東京生まれ。98年にモデルデビュー、05年から音楽活動を開始。映画やCMなどでも幅広く活躍している。7月1日に新譜「Brave vibration」を発売予定。

 


 

ある種のバブルでしたね

武藤信一 三越伊勢丹ホールディングス会長

photo:Toyokazu Kosugi

伊勢丹の新宿本店は、ファッションに興味があり、こだわりを持ったお客さまがとても多い「世界に類のない店」と私は言ってきました。

いわば伊勢丹の心臓、DNAです。この10年近く百貨店業界の平均を大幅に上回って伸びていた店ですが、いま、強烈な逆風を受けています。大変ですよ、きつくて。

ある種のバブルでしたね。例えば、1階のハンドバッグ売り場。体形の小さい日本人には大きすぎるものばかりが並んでいた。「残骸」に近い。これではこの不況がなくても、苦戦したでしょう。いま、品ぞろえを見直しているさなかにあります。

価格にしてもそうです。「高級ブランドの、このレベルなら高めでも仕方がない」という感覚が多少ありました。けれども、バッグのサイズが大きくなれば材料費も倍かかる。1日2個作っていた職人さんが1個しか作らなくなれば、コストアップの要因でしかありません。

エスカレートしたブランド品の価格は、これから2割くらい下がるかもしれない。ただ、990円のジーンズがたくさん売れるのとは意味が違う。「価格がすべて」が最近の風潮だけれど、本当にそうでしょうか。
やはり、「クリエーティビティー(創造性)」と「クオリティー(品質)」、この二つがないと、どんなに立派な店でも難しい。

お客様の声に耳を傾け、これを採り入れた品ぞろえや売り場をつくる「創造と破壊」。きちんと徹底すれば、不況を乗り切り、お客様に愛される店として、新しい需要は間違いなく出てくると思います。
しかし、百貨店は自らモノをつくりませんから、流通の体力がなくなり、疲弊してくると、業態としてひじょうに厳しいですね。アパレルなどの取引先が安心してモノをつくれるよう、業界全体のインフラづくりの議論は欠かせません。

 

むとう・のぶかず
1945年生まれ。慶応大学卒業後、伊勢丹に入る。営業畑が長く、海外ブランドのトップとも親しい。01年6月から09年5月まで社長。百貨店最大手グループとなる三越との統合をまとめ、08年4月から現職。

(文中敬称略)

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