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この秋、ユニクロの店頭に「ブランド品」が並ぶ。
90年代、「世界で最も高価な服をつくる」と言われたドイツ人デザイナー、ジル・サンダーがデザインや監修を手がけた商品だ。
サンダーは「高級ブランドの服と合わせても着られるような低価格でも洗練された服を、ユニクロと組んで全世界の人に提供したい」と、その思いを語る。
経営方針の違いなどから、自身が率いていたブランド「ジル・サンダー」を退いて5年。完璧(かん・ぺき)主義で知られる彼女が、自己表現の新たな場にユニクロを選んだことが伝わると、業界に衝撃が走った。
今はベルギー人のラフ・シモンズがデザイナーを務める「ジル・サンダー」の作品は、Tシャツでも1着2万5000円はする。「ジル・サンダー」ブランドを08年に買収したオンワードホールディングスは、イメージが崩れることを懸念し、「すべての権利はうちにある」と牽制。あるアパレル企業の経営者も「四つ星レストランのシェフが街のラーメン屋に移って、持ち味をうまく出せるのか」と冷ややかにみる。
「ベーシックで着回しがきく」商品をつくることで、年齢や性別を問わず客層を広げてきたユニクロが、対極にみえる相手と組む。その背景には、優先順位を後ろに置いてきたファッション性を磨かなければ、「ユニクロらしさ」を打ち出しにくくなってきたことがある。
ここ数年、世界でZARAなど格安の「ファストファッション」と呼ばれる業態が急伸した。日本でも、海外勢の初出店や店舗拡大が相次ぎ、しまむらやポイントといった日本勢とあわせて、若い女性向けに流行を採り入れた巧みな品ぞろえが話題になった。
一方、高級品を扱ってきた百貨店も、売り上げ不振から安さに重点を置くようになった。「低価格は当たり前」の時代、ユニクロが追求してきた「安くていい服」だけでは、もはや差別化しにくい。
グローバル企業をめざすうえでも、強い「ブランド力」は欠かせない。
ユニクロは01年以降、ロンドンやニューヨーク、北京に出店したが、うように売れず、縮小や撤退を繰り返した。「ユニクロらしさ」を客に伝えきれなかったことが一因だった。
日本での知名度は上がっても、売り上げ規模では海外のカジュアル大手に大きく水をあけられている。それに追いつき、追い越したい――。
失敗から学んだいま、中国や韓国、シンガポール、欧州などで再び拡大路線に挑んでいる。主要店にはカタカナの「ユニクロ」ロゴをあしらい、「ジャパンテクノロジー」をうたった小冊子を配るなど、「らしさ」を強調することを忘れない。
難航するとの見方も飛び交うサンダーとの協業。だが、提携ニュースは欧州メディアにも流れた。今秋にはパリにも旗艦店を出すユニクロにとって、欧州での足場を固める一助としたいところだろう。
移り気な消費者相手のファッション業界で、成功を続けるのは難しい。
だが、柳井は言う。
「ソニーやコカ・コーラのように世界のだれもが知り、買ったことのあるブランドになりたい」
(文中敬称略)