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東京大学 助教 大川千寿
●次期衆院選に向けて・・・
さて、次期衆院選が迫るなかで自民・民主両党は、政権の座をかけた戦いをすでに始めている。ただ、現状の与野党の枠組みを前提にすれば、どちらも参議院で過半数に満たない現状では選挙後に連立を組む必要が出てこよう。08年の調査では、各党の政治家に選挙後どの党と連立を組んでよいかについて尋ねている。それによると自民党は、公明100%、国民74%、民主52%、社民13%、共産1%の順となり、民主党は、国民99%、社民97%、公明30%、共産24%、自民13%となっている。自民・民主の「大連立」については、比較的前向きな自民党と消極的な民主党の政治家の間での温度差が大きい。
衆院選に向けた政党間での選挙協力は、上記のような政治家の意識と同様、現状の与野党の組み合わせに沿って進められている。しかし各党の政策的な立場を見れば、与野党いずれの連合も必ずしも「しっくりとくる」連合になっていないことが分かる。
現在与党の公明党は政策面では自民党よりもむしろ民主党に近い。一方で民主党は選挙協力を進める社民党や国民新党と選挙後も連立などの形で提携するとしても、社民党との間では特に外交・安保面で、国民新党とは特に日本型システムの面で大きな差が見られ、協調には困難が予想される。もちろん、この2つの軸だけで政策全体が構成されるわけではないし、政策的な多様性を確保することでより偏りの少ない政策の遂行が可能になるという面もある。だが、連立与党として政策調整や選挙協力を深めてきた自公両党と比べ、民主党などの野党協力の行方は未知数である。
かつて細川非自民連立政権は、政権内対立を抱えながらも「政治改革」というただひとつの共通目標によって結びつき、その目標を事実上達成した直後に瓦解した。今回、民主党を中心とする野党連合もまずは「政権交代」が大きな共通目標になっている。では、それを達成したとしていかに将来を切り開いていくのか。細川政権の失敗の教訓を踏まえて具体的に実現すべき政策を考案し、提示していくことが求められよう。これは、次の政権を狙う勢力が担う責務である。
いよいよ次期衆院選は本格的な政権選択の選挙となる。与野党ともに連合内の政策的な差異を抱えているが、これを前向きに活かし、よいマニフェスト(政権公約)として政策をまとめることができるかどうか。選挙では政権交代そのものが必然的に争点となるだろうが、それに有権者が選ぶにふさわしい政策的な中身が伴うことを期待したい。
http://www.j.u-tokyo.ac.jp/~masaki/ats/atsindex.html
からダウンロード可能である(ただし、2008年政治家調査データは未公開)。
2 今回のWeb版の分析では、「日本型システム」軸を構成する項目として「終身雇用」を外した。
なお、東大・朝日政治家調査についてはこれまでも分析・報道が行われてきたが、因子分析で「外交・安保」軸と「日本型システム」軸を構成する項目が分析・報道ごとに若干異なっている。その理由として、
・因子分析の性質上、分析結果には一定の解釈が必要であり、より意味のある解釈をするよう試みたこと
・複数年度のデータを統合した場合、年によって調査していない項目は分析に投入できないこと、また、データの年度の組み合わせによって意味のある影響を持つ項目も変わり得ること
・報道の趣旨に応じて投入する項目を変更してきたこと
などが挙げられる。分析結果の傾向は、それぞれの分析で大きくは変わらない。
3 DW-NOMINATE(http://voteview.com/dwnomin.htm)をもとに、境家史郎・東京大学大学院法学政治学研究科特任准教授が作図した。

東京大学大学院法学政治学研究科
助教
大川千寿
おおかわ・ちひろ
1981年、大阪府生まれ。
東京大学法学部卒。同大学院法学政治学研究科修士課程修了後、2007年より現職。 著作に
「安倍晋三の研究」『世界』2006年11月号(蒲島郁夫氏と共著)、
「福田康夫の研究」『世界』2007年12月号(蒲島郁夫氏と共著)、
「安倍政権の死角、新政権の課題」『論座』2007年11月号(谷口将紀氏、上ノ原秀晃氏と共著)
などがある。