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民主党は頼れるか? 自民党との違い、どこに

[Part3] 全特「今度はリベンジだ」民主、地方票に照準

「あらん限りの力をこの一戦に託し、政権交代のトンネル貫通の最後の発破を、今、ここに爆破させようではありませんか」
全国郵便局長会(全特)の会長(当時)、浦野修が訴えると、会場を揺るがすような拍手が起きた。5月17日、全国から1万人もの旧特定郵便局長やその関係者が、千葉市内のホールに集結していた。

地元に根ざす郵便局長の集まりである全特は、自民党の最強の「集票マシーン」として知られてきた。しかし4年前、当時の首相、小泉純一郎は、郵政民営化を訴えて選挙に踏み切り、自民党は300議席を獲得する。民営化に反対した全特の運命は、暗転したかにみえた。

「今回は、小泉選挙のリベンジだ」と燃える全特は、民主党候補約200人のために、すでに選挙の支援体制を整えつつある。全特が最も支援に力を入れる国民新党と、民主党が、昨年秋「民営化抜本見直し」で政策協定を結んだからだ。

全国郵便局長会通常総会であいさつする民主党の鳩山由紀夫代表=2009年5月17日、千葉市、川村直子撮影
全国郵便局長会通常総会であいさつする民主党の鳩山由紀夫代表=2009年5月17日、千葉市、川村直子撮影

「最低でも50万票は集められる」と全特幹部は自信を示す。身分が国家公務員から民間になり、堂々と政治活動できることで、さらに上積みされるとの見方もある。

全特大会の前日は、民主党代表選だった。就任したばかりの鳩山はさっそく大会に駆けつける。
「選挙に勝たせていただくためには、郵便局長さん方の多大なるご支援が不可欠です。お力をお貸し願いますように、心から、心からお願い申し上げます」

「(全特は)変わり身が早いね」。自民党元幹事長で、民営化に反対し続けた野中広務の口調には、皮肉もまじる。

しかし、全特専務理事の平勝典の民主党支持に迷いはない。
「このままでは、地方や農村が廃れてしまう。日本型システムを守らなければならない。今回の選挙が最後のチャンス」と訴える。

民主、「農村重視」へ

5月11日。民主党新顔の近藤和也は、能登半島の能登町にいた。
石川県旧鹿島町出身の35歳。京大卒で、野村証券の元営業マン。
小選挙区では自民党候補しか当選したことのない石川3区で、民主党初の議席獲得をめざしている。

あぜ道の先にある区長宅を、いきなり訪れる。
「農業のこともがんばります」。引き気味の区長の手を握って訴えた。
近藤は、民主党の農協出身の参院議員から、JAバンクのキャラクターである金魚の「ちょきんぎょ」のネクタイをして回れ、とまで言われていた。

都市部の選挙を勝ち抜き、政策通でスマート。しばらく前まで、民主党はそんな議員たちが仕切るイメージがあった。しかし、農村部が抱える議席は多く、都市部の支持だけでは政権は取れない。

小沢一郎が代表になった後、民主党ははっきりと「地方重視」を打ち出す。07年の参院選で、1兆円にものぼる農家への戸別所得補償を柱とする農業政策を、3大政策の一つとして「格上げ」し、地方の一人区の大勝に結びつけた。

5月15日。東京で開かれた農業についてのシンポジウム。
「これはひどいよね」と、民主党議員に食ってかかったのは、農水相の石破茂だった。
石破が持ち出したのは、07年参院選で民主党が配った農業政策のマンガ版マニフェストだった。「全ての販売農家の所得は補償され農業が続けられます」と聞こえのよいことしか書いていなかったというのだ。民主党の基本方針は農産物の関税引き下げを伴う「自由貿易協定(FTA)推進」だが、参院選では強く訴えなかった。

自民党も、大規模農家などへの補助は惜しまない。輸入米についても高関税維持の立場だ。
民主党との戦いは、「農村部へどれだけお金をつぎ込むか」という競争になりつつある。

大きな政府VS.大きな政府

「自民党から小泉色が消えたことで、経済政策の分野で、自民党と民主党との対立軸は、全く見えなくなった」
安倍、福田内閣で経済財政相を務めた大田弘子は、そう語る。
規制緩和などによって既得権を打破し経済成長をもたらそうという「成長重視派」は力を失い、自民も民主も「分配重視」。
「分配は政治の大切な役割だけれど、改革をせずに成長できるような日本経済ではないはずでは」と大田は思う。

海外の二大政党の国では、政府の介入を積極的にとらえる「大きな政府」派の政党と、民間活力を重視する「小さな政府」派の政党に色分けされることが多い。対立軸があることで、国民は、どちらかを「選択」できる。

その意味では、自民党と民主党との戦いは、いわば「大きな政府VS.大きな政府」という構図にもみえ、有権者には冷めた空気も漂う。自民と民主の政策に「大きな違いはない」と考える人は、朝日新聞の全国世論調査(2月~3月実施)で67%にのぼる。

「自民党政治の終わり」(ちくま新書)を著した政治学者、野中尚人は「民主主義の成熟のためには、官僚との関係や国会の仕組みなどの統治メカニズムだけでなく、経済政策についての対立軸が必要だ」と話す。

自民、民主の「対立軸」は今後、はっきりしてくるのか。政界再編によって「選択」しやすくなるのか。それとも、財政の破綻があらわになるなど、日本経済がさらに大きな危機に直面するまで、「対立軸」はみえてこないのだろうか。

(文中敬称略)

取材記者略歴

高橋万見子(たかはし・まみこ)
GLOBE副編集長

池田伸壹(いけだ・しんいち)
GLOBE記者

梶原みずほ(かじわら・みずほ)
GLOBE記者

築島稔(つきしま・みのる)
GLOBE記者

磯貝秀俊(いそがい・ひでとし)
政治グループ記者

星野眞三雄(ほしの・まさお)
経済グループ記者

坂尻顕吾(さかじり・けんご)
中国総局員

伊藤宏(いとう・ひろし)
アメリカ総局員

大野博人(おおの・ひろひと)
ヨーロッパ総局長

浜田陽太郎(はまだ・ようたろう)
GLOBE副編集長

石合力(いしあい・つとむ)
GLOBE副編集長

山脇岳志(やまわき・たけし)
GLOBE編集長代理

表紙写真

中野正貴(なかの・まさたか)
写真家。「東京窓景」
「TOKYO NOBODY」など

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