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民主党が政権を取った場合、官僚は、本気で協力するのだろうか。
しばらく前まで民主党内には、各省の幹部職員に政権への協力を約束する「
誓約書」を書かせるといった強硬論もあったのだが……。
「心配しなくていい」と話すのは、参院議員の鈴木寛だ。
鈴木は経済産業省の出身。党内で選挙のマニフェスト作りを担うメンバーの1人でもある。
鈴木は言う。「財務省と経済産業省は賢い。理にかなった改革であれば、彼らはちゃんと政治家についてくる」
別の参院議員は「すべての省庁の会計課長を財務省から送り込む。その下に補佐役を設け、民間から公募した公認会計士をつける」という「秘策」を打ち上げる。 財務省は健全財政主義なのだから、歳出カットに協力してくれるはず、というのだ。
財務省は、「省庁の中の省庁」と言われ、予算と税制を握る官僚機構の中枢である。政治主導を確立するうえで、民主党が警戒すべき相手ではないのだろうか。
事実、民主党首脳は、「財務省叩き」を繰り返してきた。
代表の鳩山由紀夫は、幹事長時代に「財務省主導の政治を根底から変えていくためにはどうするのか、ということが求められている」(昨年7月の講演)と話した。

昨年春には、日銀総裁人事をめぐって政府と民主党が対立した。
当時の代表の小沢一郎は、福田内閣が出した元財務事務次官の武藤敏郎らの総裁案を「天下りは許さない」と拒否。「財務省と対峙する民主党」というイメージは定着した。
「本当は、小沢代表は、財務省を敵視するつもりはなかった」
そう明かすのは、民主党最高顧問の藤井裕久だ。
藤井は元大蔵官僚で、細川・羽田政権時代に蔵相を務めた。党内で、民主党政権になった場合、財務相の有力候補の1人との声もある。
藤井が昨年1月、小沢と話したときには、武藤・日銀総裁案を容認するムードだった。
小沢は藤井にこう語った。
「政権が取れるかもしれない。そのとき、財務省を敵に回すと何も動かなくなる」
別の民主党代表経験者も「民主党政権になったら、財務省とは協力関係を築いていく」と明かす。財務省の幹部と、定期的に会合を開いて情報収集をしている民主党幹部は少なくない。
当の財務省は、民主党と積極的に距離を縮めようとはしていない。
「国民福祉税のトラウマがあるからね」と幹部は話す。
93年に自民党が下野して細川政権が誕生したとき、大蔵事務次官(当時)の斎藤次郎は、連立与党の実権を握っていた小沢一郎と組んで「国民福祉税」構想をぶち上げた。
結局つぶれたが、大蔵官僚の「変わり身の早さ」は自民党に衝撃を与え、その恨みは、やがて大蔵省が分割される遠因にもなった。
民主党が政権を取っても、長期政権になるかどうかわからない。それなら、下手に組まないほうがよい、という計算が働く。
そもそも、「民主党は、本当に歳出をカットできるのか」と疑問を呈する向きもある。
財務省のある局長は、「与党の国会議員は地元の利益誘導に傾きがちだ。
民主党も、政権を取ったら自民党とさして変わらなくなるのでは」と予測する。
民主党の中央は、高速道路の新規建設には慎重だが、第二名神高速の予定地になっている地元の民主党は「推進派」だ。与党になったときに、地元の意思を無視し続けられるかどうか。
さらにシニカルな見方もある。
ある財務省職員は「財務省が健全財政主義だという前提が間違い」と内部批判する。
財務省が本気で歳出カットをする気がないから、国と自治体の借金が800兆円にも膨れあがった。時の政権と組み、特殊法人などへの「天下りの確保」とひきかえに、国民にわかりにくい特別会計も使って歳出を膨らませてきたのが財務省だ、というのだ。
だとすれば、民主党と財務省が「握った」としても、財政が健全化するとは限らない。
(文中敬称略)