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ヴェオリア・ウォーターのパリ本社で、最高経営責任者(CEO)のアントワーヌ・フレロ氏に話を聞いた。
世界64カ国で事業を営み、従業員は約9万3000人。08年の売上高は126億ユーロ(1兆6500億円)、営業利益は12億ユーロ(1600億円)。
02年に日本進出。埼玉、千葉、広島県内で下水道を運営している。

――世界的な水不足、水危機と言われている。
フレロ 水不足といっても、世界に存在する水の量が減ったわけではない。「安全な水にアクセスできない人々のため水道管を通そう」という政治の意思が欠けていることが問題だ。
ただし、都市部で人口増が著しく水の消費が増えたことなどで、河川など容易に使える水資源が枯渇し始めているのは確かだ。
対策の一つは、無駄をなくすことだ。米国でさえ、老朽化などで水道管の漏水率が5割近い都市がある。
もう一つは、新たな水資源の開発だ。海水の淡水化もあるが、我々は「下水の再生」がカギを握ると考えている。水の消費量が多い都市部ほど「原料」もたくさんつくられ、遠くの水源から運ぶコストもかからない。また、再利用のため汚水を徹底的に浄化するので、環境汚染の防止にもなる。
――アジアの市場をどう見ているのか。
フレロ 中国では、急激な都市化に伴う需要増に対応するノウハウを引き続き提供していく。最近、天津で新たな契約が締結され、我々がサービスを提供する人口は2900万人になった。
日本では市町村が直接、水道事業を運営しておりコスト高になっているが、税金を投入して料金を低く抑えている。
我が社は日本の自治体に対して「効率化によるコスト削減によって料金を引き上げずに、税金の投入も減らせる」と提案している。事実、欧州では、水道事業のコストは全額を料金で回収するのが原則だ。世界第2の経済大国である日本で、できないはずがない。
――足元のパリ市は水道事業を再公営化し、ヴェオリアやスエズとの契約は切れます。
フレロ 市当局は、我々の配水・給水サービスについて良質と認めている。漏水率は4%と極めて低い。再公営化して改善する見込みはない。また、料金は上がると聞いている。であるなら、理由は「政治」、別の言い方をすれば「イデオロギー」以外にありえないだろう。
――民間企業の活動が後退しているのでは。
フレロ それは違う。世界で水道サービスを受けている人口のうち、民間企業のシェアは8%で、10年前の4%から倍増している。昔から民間企業が強いフランスでは65%に達しており、これも少しずつ増えている。
官による直営しかなかった水道事業に、民間企業が委託という別の選択肢を示した意義は大きい。我が社は世界中の自治体や企業を相手にした4400もの事業を通してノウハウや経験を蓄積している。公営のままでは、そのような蓄積を生かせない。今後とも、民間委託の流れは続く。
――「007」の最新作で、ボリビアの水資源を狙う悪役はフランス人が演じている。
フレロ よく誤解されるが、我々は水資源や浄水場や水道管などの施設を原則として所有しない。だから、「民営化」という言葉からして間違っている。水道事業の運営受託というサービスを、市町村に売っているだけだ。
だが、映画では「悪いフランス人が、水を独占する」と、誤って単純化されたイメージの方が受けがよいのだろう。また、10年で倍増という成長市場に、うまく食い込めない米国など他国の企業が抱くねたみも背景にあるかもしれない。
(聞き手・浜田陽太郎)