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中国で深刻なのは、水質汚染だ。
上海から、蘇州に向かう車中。川の土手に突き出しているパイプから注ぎ出る水が赤茶色に濁っているのが見える。土手の向こうには工場、辺りには畑が広がっている。背筋がぞっとした。
中国の汚水処理率は、約660ある都市でも6割程度。いまだにその4分の1強の都市には汚水処理場すらない。中小の工場の多くは、未処理の廃水を河川に垂れ流しているといわれる。
中国環境保護省が昨年、長江や黄河などの7大水系の水質をモニタリングしたところ、「いかなる用水としても使用不可能」という判断になった調査地点が4分の1近くにのぼった。全国の半数の都市では、深刻な地下水汚染が起きている。工場から有害物質が流出するたび、スーパーのミネラルウオーター売り場に市民らが押し寄せる。

中国政府の第11次5カ年計画(06~10年)では、水道の整備などに1630億元(約2兆2000億円)、汚水処理関連には、水道を上回る3320億元(約4兆6000億円)の投資が盛り込まれた。
ただ、アジア開発銀行(ADB)北京事務所の王建国は「そもそも企業の間に、汚水の処理に対して、適正な対価を払うという意識が浸透していない」と話す。「垂れ流しを規制する法はあっても、地方政府が企業に厳しく働きかけない」
一方、清華大環境管理・政策研究所長の常杪は「中国の水ビジネスの主戦場は、汚水処理へと移行しつつある」とみる。
中でも、企業向けのビジネスが有望だという。この分野では、米国のGE(ゼネラル・エレクトリック)が存在感を示し始めている。
GEの中国の水プロジェクトのリーダー、林黎萍は「中国では、先進国に比べ、水使用の効率が極端に悪い。工業用水の再利用を進め、浪費をなくすだけで大幅なコスト削減ができる」と話す。水不足が深刻な北部の発電所などをターゲットに水循環システムを売り込む。
また、携帯電話に使われるプリント基板といった精密部品をつくる工場では、製品の不良品率を下げるために、きれいな水が必要だ。旭化成ケミカルズは日系の進出企業の水処理を請け負っている。
中国企業でも、「中国版水メジャー」をめざす有力勢力が次々と生まれている。
今後、企業向けビジネスとして、膨大な汚水処理の需要が発生する、との見方が強いからだ。
清華大の常は「度重なる有害物質の流出事故は、中国の経済発展の持続にとっても制約要因になりつつある」と指摘する。「環境に対する市民やメディアの社会監視も、いや応なく厳しくなっていく。先行して市場に参入する企業のうまみは大きい」
企業向けビジネスだけでなく、中国の地方自治体とのビジネスに取り組んでいるのが丸紅だ。
成都市でヴェオリアと共同で浄水事業をしている丸紅は、安徽省合肥市では、下水処理施設運営の受注をねらっている。06年にはチリの上下水道会社を買収するなど、海外での実績を積み重ねてきた。
中国の汚水処理市場への挑戦は、「欧米勢に比べ影が薄い」とされる日本企業にとって、巻き返しのチャンスでもある。
(鈴木淑子)
[文中敬称略]