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先を行く日本を追う一方、中国に激しく追い上げられる。韓国経済はそんな「サンドイッチ経済」状態にあり、岐路に立っている、との指摘が聞かれる。現状からさらに競争力を高め、韓国経済を「一歩上」に引き上げるうえで、特許や知財への取り組みもますます問われる。知財行政のトップ、韓国特許庁長官の高廷植氏に話を聞いた。
(3月10日、韓国・大田の特許庁で。聞き手:稲田清英)
――まずはそもそも論ですが、なぜ特許が重要なのでしょうか?
高廷植 ビジネスというのは、支配的な特許を持っている領域と、そうでない領域で収益がまったく異なるということですね。より多くの売り上げと利益を確保する観点でいえば、特許がなければ無限の競争にさらされるが、特許があれば、多くの利益を享有できます。知財戦略に力を入れるのは、その意味で当たり前のことです。
――中小企業の知財への取り組み支援に政府が力を入れる背景は?

高 中小企業といっても千差万別です。特許経営をきちんととやっている企業もありますが、政府としては、知財に関心を向けてもらい、人材育成も進めよう、ということで、専門家によるコンサルティング事業などを進めています。
――知財の重要性への認識をなかなか持てない企業が多いということですか?
高 そういうわけではありません。重要だとは分かっているが、具体的にどうすればいいのかという部分が問題。お金があれば外部の専門家を雇えばいいわけですが、中小企業ではなかなか難しい。内部に専門性のある人材がいれば信頼のおける判断で紛争などの事件にも対応でき、普段の戦略づくり、非常時の双方に貢献してくれる。だから政府に対して、そうした人材育成を助けてくれという要請が多いのです。
――今後の課題は。
高 知的財産強国、という目標を打ち出しているが、世界各国で同様の政策が推進されているのは明らかです。「強国」になろうとするなら、知財を生み出せる優秀な人材が必要で、そうした人材が能力を発揮できる創造的なシステムや制度、インフラなどをどう整備できるか、社会システム全体が競争力につながっていきます。
何に取り組めばいいか、は誰もが分かっています。差が出るのは、どれだけ実践出来る能力があるか。米国は以前から知財を重視しており、日本も「知財立国」を打ち出しました。他国も同じです。経済の一定の発展段階が来れば、次は知財の発展を、という目標を掲げるのは当然です。
韓国は今、半導体が世界トップクラスで、携帯や家電製品もそうです。さらに発展するには、一層の付加価値が必要になります。ただ製造業でずっと競争力を維持するのは難しい。サービス産業、知財産業と結びついたサービス産業の比重を高めようとしています。
――経済の構造転換がそう簡単にできますか?
高 70年代初めまででも合板や繊維産業程度しかなかった韓国の産業は、70年代に電子、造船、自動車、鉄鋼、化学産業といった今の主力産業を短期間で作り上げました。今では世界市場での一流企業が出現して戦っています。何もなかったところから今まで来た苦しみに比べれば、今からさらに1段階アップグレードすること自体は、相対的には難しくないと思います。
どうすれば創造的な労働力を継続して維持できるかが国家的な課題。今後の競争力もそうした人的資源の競争力に左右されることになります。企業のニーズにあう人材をどう供給できるかということがキーポイントですが、日本や米国と同様に、我々も理工系離れという共通の問題を抱えています。
――韓国は市場を創造する先端技術に弱みがあり、むしろ創造性よりも、大量に安くつくる、という量産技術を通じて競争力を得ているとの指摘がありますが?
高 韓国もR&D投資が多く、GDP対比でみると世界的にみても非常に高い水準の国です。ほぼ4%に迫っています。韓国経済も、もはや独創性がなければ発展できない段階です。以前は世界市場で、韓国製品は今のようなプレミアムブランドではありませんでした。過去にはソニーの牙城があったが、今サムソンやLGが競争力を持っているのは、一日で成し遂げたものではありません。源泉技術では韓国が日本や欧州、米国に比べて不足している点が多くありますが、時間が経つにつれ、我々が世界的に先行する技術も生まれてくるはずです。
――日中韓の協調で重要な点は?
高 たとえば日本の企業は韓国でも中国でも出願しています。企業の立場からみれば特許審査が一貫性をもって速く進んでくれるのが望ましい。特許業務というのは本質的に国際的な業務だから、3国の知財当局がうまく協調して情報交換や人的交流などを進め、効率的に動けるようにするのが重要ではないかと思います。