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特許バトルロイヤル

[Part2] 「大アジア市場」へ 日中韓の足並みは


経済のグローバル化で世界的に特許出願は増え、複数の国での出願も日常的になっている。ひとつの発明特許を一つの国で出願すれば、世界中で円滑に認められるような「仮想・世界特許庁」の構想も語られ始めた。具体的な体制構築に向け、日本が協力するパートナーとして、中国、韓国が一段と重要になっている。

 

東アジア諸国の間では、80年代から「アジア特許庁」設立構想もあった。
日本で認められた特許が他の東アジア諸国でも認められるようにし、地域統合を進める案だった。この地域で事業を展開する日本企業には、大きな利点があると考えられた。ところが、当時は日本と他の国々との技術格差が大きく、「日本だけが得をする」との見方が強く、具体化しなかった。

しかし、今や中国の特許出願(08年)が29万件、韓国が16万件と米日両国に次ぐ水準に増え、事情が変わってきた。
日本はすでに韓国との間で、07年から「特許審査ハイウエー」を構築している。
日韓両国に出される特許出願のうち、1割前後は同じものが重複するため、一方の国で行った審査結果を相手国に提供し、審査の効率化を図るものだ。
出願者には「特許取得のコスト削減や国外での手続きの迅速化が利点」(特許庁国際課)という。このハイウエーはすでに米英独など世界13カ国・機関の間で動き出している。
中国は、まだ国外での特許出願が多くないため、ハイウエー参加は遅れている。
しかし、日中韓の間では01年以降、3カ国の特許庁長官による会合を毎年、開催。日中韓の3カ国語で書かれた特許関係資料を自動翻訳して交換したり、出願の様式を共通化したりする協議が進んでいる。
中国などアジア全般の事情に詳しい協和特許法律事務所(東京)副所長の弁理士、黒瀬雅志は言う。「日本は今後、『大アジア市場』の創造でリーダーシップを示すべきだ。知的財産を保護する制度整備や人材育成などアジアで進めるといい」

日本は中国に対し、78年の経済開放直後から知財をめぐる人材育成支援で協力してきた。
その結果、今では、特許庁にあたる中国政府の国家知識産権局で働く審査官は、日本(約1700人)より多い約2千人に達し、設備も最新鋭の機器を整えている。
大和総研で知財を担当する中国出身の研究員、鄭淑琴は「中国では出願や紛争の急増で、知財関連の人材ニーズは今後も一層高まり、2020年までに10万人近い専門家育成が必要とされている」という。
一方、中国の意識改革は道半ばだ。知財関係者の間で、中国浙江省政府の工商行政管理局が昨年末、ホームページで流した通達が話題になっている。

企業活動で公共秩序や食品の安全などを損なう違法行為は取り締まるが、他の一般的な違法行為は警告や改善命令などの穏便な措置にとどめる、という内容だ。とくに海賊版商品など商標権問題は、当事者間の和解を中心に解決を図る方針が示された。日本の特許関係者は「不況で販売低迷に悩む中国企業に、多少の違法行為はお目こぼしするという意味だろう」とみる。
黒瀬は「日本は、中国の地方政府や企業の知財意識の向上に力を貸すべきだ」と話す。

(文中敬称略)

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