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特許バトルロイヤル

[Part1] 徹底監視して、先んじろ

NEC、中国新興企業をマーク


東京都港区のNEC本社33階。知的資産統括本部に、担当者3人だけの特命チームがある。
中国の通信大手「華為(ホア・ウェイ)技術」の動向を監視して情報を収集する専任部隊だ。08年夏にできた。

華為は、88年設立。世界知的所有権機関(WIPO)の08年国際特許出願ランキングで、日本のパナソニックを上回り、中国企業としては初めて1位になった。

NECの部隊は、中国の特許庁にあたる「中国国家知識産権局」のホームページを分析し、華為が中国で出願した特許件数や技術分野を調査。NECとの比較などが一目でわかる「特許マップ(地図)」と呼ばれるチャートづくりを続けている。
調査はそれにとどまらない。中国23%、アジア・太平洋17%、中東・北アフリカ13%、南アフリカ12%……。96ページに及ぶ社内資料には、地域別の売上高やプロジェクトの内容など、華為の「素顔」を示すデータが並ぶ。

中国の通信大手「華為技術」の本社=中国・深圳で、稲田撮影
中国の通信大手「華為技術」の本社=中国・深圳で、稲田撮影

NECはデジタル無線の売上高で世界首位だが、ライバルとして急追するのが華為だ。無線技術は、通信ケーブルなどのインフラ整備が遅れている途上国で使われることが多いが、「華為は途上国に華僑ネットワークを使ってゲリラ戦のように突然参入してくるようになった」と同本部支配人の尾形偉幸は危機感を強めている。

脅威は、特許重視という戦略の重なりにもある。
NECは2年前に「グローバル特許出願戦略」と呼ばれるプロジェクトを始動。約80カ国を対象に経済成長率や特許出願件数の伸び率など項目別に順位をつけ、どの国に出願すべきかを毎年見直している。新興国がWTO(世界貿易機関)に加盟すると、「TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)」に基づいて特許制度を整備するのを義務づけられることも拍車をかけた。

東大特任教授(知的資産経営)の妹尾堅一郎は「市場拡大が見込める国では、特許がなければ模造品対策に困ることになりかねない。現地生産をするなら、工場からの技術流出の恐れを予防する必要もある。新興国への特許出願は着実に増えていく」と予測する。
山登りにたとえるなら、特許を取得することは山頂に旗を立てることに等しい。そして、山頂に先に到達した者だけが市場を独占できる。NECと華為の競争も、「いかに相手より先回りするか」が、勝負の鍵を握る。

中国・深セン(土へんに川)市の中心部から、車で約40分。華為本社を訪ねた。
広大な敷地に、研究開発部門が入る宮殿風の白い建物などが並び、緑豊かな芝生や池もある。周りのマンションは従業員社宅で3千戸以上あるといい、病院やプールもあった。

「HUAWEI」のロゴが目立つビルの地下は通信機器や設備が並ぶショールーム。「世界のトップ50の通信会社の7割に供給」といった誇らしげな表示が目立つ。パンフレットをめくると、アフリカや中東、南米に加え、英ボーダフォンなど欧州の主要通信企業も顧客として紹介されていた。
記者(稲田清英)に応対した広報担当者は「見学はOKだが、知財担当者の取材は受けられない」とガードが堅い。

同社ホームページによると、世界中に約8万7500人の従業員を抱え、うち43%が研究開発部門で働く。
華為の特許重視の経営姿勢について質問すると、後日メールで回答がきた。「顧客の需要に合わせたイノベーションが我々の哲学。欧州の顧客もその能力を評価するからこそ、我々を選んでいる」
華為を追う存在が、同じ深圳に本社を構える中興通信だ。WIPOの08年の特許出願ランキングでは、13ランク上昇の38位。欧州やアフリカなどでは通信会社向けの設備だけでなく、携帯電話の販売も積極的に進めている。

知的財産部門を率いる王海波(33)は「市場でのシェア拡大につれ、圧力を感じた他メーカーは知財を手段に迎撃してくる。先手を打つ対応が必要だ。取り組みは日本のメーカーと比べても見劣りしないレベルに来ていると思うし、一部ではすでに先を行っているとも思う」と話した。
NECの尾形も「特許の世界では2番手は負けを意味する」。今日も、中国の動きから目を離さない。

(文中敬称略)

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