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[インタビュー編]もっと plug-in

[第3回]

リチウムイオン電池はこんなところにも使われている

 

三菱商事が世界の主要電池メーカーを研究して、電気自動車プロジェクトの電池パートナーにジーエス・ユアサコーポレーション(GSユアサ)を選んだのは、「大型電池のノウハウがもっとも蓄積されている」からだった。

3月半ば、京都市内のGSユアサ本社を訪ねた。案内された棟は築60年以上。今はもっぱら応接用だというが、木造2階建ての建物に流れるヒンヤリとした空気は、1世紀以上にわたって日本のものづくりの一画を築いてきた老舗企業のたたずまいを感じさせる。

経営戦略統括部の沢井研課長が応対してくれた。「GSユアサが手がけるのは蓄電池です。2次電池とも呼ばれる、充電して繰り返し使える電池ですね。市場の半分以上を占めるのは鉛電池ですが、ほかにもニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池などがあります。さらに、ここにきて急速に注目され出したのがリチウムイオン電池です」

ロケット、そして、深海調査船にも

 

国産ロケットのH-ⅡA。2009年1月23日には15号機が打ち上げられた

1990年代初め、世界で最初にリチウムイオン電池を商品化したのはソニーだが、携帯やパソコン向けの小さなものだった。GSユアサも当初は小型電池での開発に注力したが「大型でもやってみよう」と97年から特殊用途向けにサンプル出荷を始め、産業用に技術力を高めていった。そこでの実績が、三菱商事の目にとまった。

自動車への応用でブレイクした感のある大型リチウムイオン電池だが、実はすでにさまざまな分野で利用され始めている。そして、それらの分野でも、軽くて小さくて高性能なリチウムイオン電池は「期待の星」となっているのだという。

「例えば、宇宙産業です。この用途向けの大型リチウムイオン電池はGSユアサとフランスのサフト社が圧倒的に強く、ほぼこの2社だけと言ってもいいぐらいです」と沢井課長。人工衛星の多くは太陽電池で電力を得ているが、地球の影になって発電ができなくなる時間帯の補助電力などに使われるのだという。

日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げているH-ⅡAロケットにも電気系統の電源や発射時の動力源としてGSユアサ製のリチウムイオン電池が搭載されているし、ボーイングの次世代民間旅客機にも非常時のバックアップ電源用などに採用されている。重力に反して飛ぶ以上、「できるだけ軽いほうがいい」からだとか。

「宙」に向かう乗り物に必要なら、「海」に潜る乗り物だって――。独立行政法人、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が運行する有人潜水調査船「しんかい6500」の動力源も、リチウムイオン電池だ。水深6500mまで潜航して地形や生物の調査を繰り返しているが、2004年までは酸化銀亜鉛電池が使われていた。高性能のリチウムイオン電池になったことで寿命が1年から3年に延びたほか、電解質の入れ替えなど面倒だったメンテナンスが楽になり、整備しやすくなったのだとか。

地球変動などの原因解明に貢献する「しんかい6500」=海洋研究開発機構提供

電車の「ハイブリッド化」にも貢献している。最近の電車はモーター出力が大きいのだが、変電所と変電所の間が長いと途中で電圧が下がってしまう。途中に変電所をつくればいいが、設備投資にかなり資金がかかる。そこで「電車にリチウムイオン電池を載せて電気を貯めておき、電圧が下がってきたらアシストしてやる」という方法が普及し始めているのだという。

ブレーキをかけたときに出るエネルギーも電気エネルギーに「回生」してやるので、より効率的。「電気と電池のハイブリッド」というわけだ。今後は、非電化区間であっても電化する必要がなくなるかもしれない。都市部中心で、変電所をつくりにくい路面電車(LRT)なども、全線、あるいは一部を架線レスにして、車両に搭載した電池を停留所などで充電する方式にすれば、ぐっと敷設しやすくなりそうだ。

なるほど、と思ったのは、港でコンテナを上げ下ろしするクレーンのハイブリッド化。ほとんどディーゼルエンジン方式なのだが、黒煙が出るなど環境に負荷がかかりやすい。そこでアシスト用にモーターとリチウムイオン電池を積むようにした。エンジンの最大出力を3分の1に抑えられるのはもちろん、コンテナを降ろすときにかけるブレーキのエネルギーを電池に戻せるようになったので、燃料消費を6割カットできるという。「昨年、香港に納めて以来、世界中から引き合いがある」というのもうなずける。

GSユアサのリチウムイオン電池事業はまだ、年間3000億円強ある売上高の5%にも満たない。だが、2020年度には市場全体で今の2.4倍の2兆円規模に育つと予測されている戦略分野だ。沢井課長も昨年4月までは鉛電池の研究開発に携わっていたが「今や、こうやって記者の方にリチウムイオン電池の説明をしています」と笑う。人もお金もリチウムイオン電池関連にシフトしているのは間違いない。

開発途上にある大型2次電池。新たな使い道もまだまだありそうだ。

(高橋万見子)

 

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