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[インタビュー編]もっと plug-in

[第2回]

大学と企業と 電池は「社会インフラ」を目指す

 

プロジェクトが動き出したのは、電気自動車への「試乗」がきっかけだった。

東京工業大学で環境・エネルギーシステムの研究をしている柏木孝夫教授は、大学をあげた研究「AES(Advanced Energy Systems for Sustainability)」のリーダーだ。低炭素社会を実現するため、実際に商業化できる社会基盤をつくるのが目的。さまざまな企業もパートナーとして参加している。

太陽光で発電し、充電する。東工大の実験は、自然エネルギーによるインフラづくりをめざす=東京・目黒の東工大で、小杉豊和撮影

そのうちの1社、三菱商事の担当者から「ぜひ一度」と勧められたのが、三菱自動車が開発中の電気自動車だった。1年半ほど前のこと。原油価格が高騰し、周囲では急速にバイオ燃料や環境対応車への関心が高まっていた。走ってみると、加速感も乗り心地もいい。

「これならいけるかも」。柏木教授は新たな試みにゴーサインを出した。「再生可能エネルギーと結びつけた充電インフラづくり」(本編2-2参照)には今、三菱商事、三菱自動車、電池メーカーのジーエス・ユアサコーポレーションが加わり、太陽光や風力などの新エネルギーを電気自動車の充電設備に活用する実験を続けている。

経済産業省の総合資源エネルギー調査会の部会長も務める柏木教授が考えているのは、都市部におけるエネルギーの効率的な利用法だ。

「電気自動車が都市の電力利用の最適化に役立つ」と話す東京工業大学の柏木孝夫教授=東京・築地で、野島撮影

今のシステムは、電力会社が大規模な発電所でつくった電気が各家庭や企業に一方的に送られてくるだけだ。だが、柏木教授は「大量の電気が必要な工場などはともかく少なくとも家庭用であれば太陽光で十分まかなえるはず」と見る。実際、ここにきて太陽光発電システムを積極的に取り入れる家庭も増えてきた。

問題は、太陽光発電は「気まぐれ」なことだ。雨の日や夜間は働かない。天気のいいときに発電した電気を貯めておいて常時使えるようにする必要がある。あるいは、「余った電気」を電力網に戻してやって必要な個所で使えるようにすれば効率的だ。住宅が密集する都市部なら、個々の太陽光を結んだ新エネルギーのネットワークを構築しやすい。

柏木教授は、この循環システムに電気自動車を組み込むことで「都市部のエネルギー循環を最適化できる」と言う。カギになるのが、電気を貯め込むことができる2次電池だ。

単なる部品にするな

2月下旬、東京本郷にある東京大学の弥生講堂は、ぎっしり埋まっていた。自動車、商社、電機、電力、住宅など業界約60社、160人余り。東大の学者たちが主催する「2次電池を使った社会システム・イノベーション」の会合だった。高性能のリチウムイオン電池を自動車や住宅、職場へと幅広く応用して社会インフラにしようと研究や提言を続けている。

この日、演壇に立った宮田秀明教授は「2次電池を半導体や薄型テレビにしてはいけない」と強調した。テレビやビデオ、半導体など、日本の電機メーカーが誇った技術や新機軸の製品の多くは、安いコストを武器とする韓国や中国の企業に追いつかれ、過当競争に陥った。2次電池はまだ日本が競争力を維持しているが、このままだと電気製品や自動車の一部品になってしまいかねない。業界を横断するような発想をもち、新しい社会モデルの構築へとつなげていくべきだ、という認識だ。

2次電池を社会システムに組み込む研究を続ける、日産自動車出身の堀江英明・東京大学・准教授=東京・銀座の日産本社で

その一つが、電気自動車で使用済みになったリチウムイオン電池の再利用。車載用電池は大容量で、使用条件が厳しい分、安全性も高い。自動車用としては寿命が来ても、ほかの用途ならまだ十分に使える。家庭や地域に設置して、太陽光や風力で発電した電気を貯めるようにしてもいい。リチウムイオン電池はまだ高いのが難点だが、中古電池の市場ができれば当初価格を安く設定するインセンティブになる。電気自動車の普及にも役立つ。

研究会の中核メンバー、堀江英明准教授は、リチウムイオン電池の車への応用にいち早く目をつけて開発を先導してきた日産自動車の技術者だ。「自動車は人の命に直結している消費財だけに、そこに搭載していく技術も「成熟した」(=枯れた)技術でなければならなかった。しかし、自動車用の電池はそうした安全性・信頼性を担保しながら技術の最先端を行くという希有な例。今後、さまざまな環境技術を束ねる『ハブ』になりうる」と話す。

大学や企業が、それぞれの持ち味や知恵を出し合いながら、新しい技術と社会を結びつけるよう機能すれば、思いもよらない未来が開けてくるかもしれない。(野島 淳)

 

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