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ラリーやF1、開発費が青天井の世界でガソリン車の粋を極めつくした男がたどり着いたのは、音もなく走る「家電」のような電気自動車だった。新しい乗り物として車をとらえ直し、独自の電気自動車や電気スクーターを開発・販売するベンチャー、オートイーブィジャパンの高岡祥郎社長が話す、大手メーカーとの違いとは――。
(2009年4月、東京都八王子市のオートイーブィジャパン本社ほか。聞き手・高橋万見子)

――なぜ電気自動車をつくろうと思ったのですか。
高岡祥郎 9年前、仕事でイタリアのフィレンツェに出張した折に出合ったのが最初です。中心街への一般車の乗り入れが規制されている中で、電気自動車のレンタカーはOKだった。
それまで電気自動車というとゴルフ場のカートぐらいのイメージしかなかったんですが、試乗してみると小気味よく走る。それですぐ購入して日本に送ったんです。
自分もレーサーとして黒煙をまき散らしてきたわけで、石油の枯渇を考えても時代は電気自動車に向かうと直感しました。ただ輸入した車を実際に東京で走らせてみると、時速45km、上り坂だと30kmぐらいしか出ないこともあって、全面的に開発し直さないといけないな、と。それで会社を立ち上げました。
――ここにきて大手メーカーも乗り出しました。強敵では?
高岡 確かに自動車を量産するには大規模な設備投資が必要で、これまでは新規参入がむずかしかった。しかし、電気自動車は「次世代車」であり、「自動車」という概念にとらわれなくていい。私はむしろ「家電」という発想で開発してきました。部品点数も少ないし、メンテナンスもガソリン車ほどの技術や経験はいらない。ちゃんと講習を受ければ、例えばテレビの修理ができるぐらいの人なら扱える。
それに大手メーカーだと、どうしても今走っているガソリン車が基準になる。そこからエンジンやミッションを降ろして代わりにバッテリーとモーターを積む、という発想になりがちです。また、大勢の意見を調整しながら新車を開発するので、1つのコンセプトに向かっていきにくい。
私は電池の負担を考えて車体を軽くするためにあえて高価なアルミ合金をボディーに使うことにしました。ゼロから電気自動車にふさわしいボディーを考えた結果です。必要なのは私の決断だけ。まったく新しい乗り物をつくるようなときには、そうした発想の転換や経営のスピード感といったことが大切な要素になります。
――そうやって開発した2人乗りの電気自動車「ジラソーレ」で苦労したのは?
高岡 電気自動車は過去100年間に幾度と現れては失敗して消えていった。いずれも問題は「燃料」である電池でした。現代において公道で電気自動車を使いこなすためには、高密度・高出力の電池が必要です。しかし、これを単に搭載するだけでは危険な面もある。高速で走れて、かつ安全に充放電でき、しかもできるだけコストのかからない車用のリチウムイオン電池を探し回りました。
こうした新技術というのはたいてい軍需産業の周辺にあります。4年ほどかけてたどりついたのが中国の軍事産業、サンダースカイ(雷天)が製造している電池でした。最初のころは輸入されたサンダースカイの電池の箱を開けると、「ミリタリースペック」と書いてある保証書が入っていたりしましたよ。
――今度発売する電気スクーターは、中国BYD社の電池を搭載しているそうですね。
高岡 ジラソーレのときも、実は最初に接触したのはBYDだったんです。タクシー用の電気自動車をつくろうとしていると聞いて訪ねたんですが、「売る、売らないはこっちの勝手だ」と言わんばかりの応対で、あきらめました。
今回も、深?の本社側の対応は同じようなものだったんですが、「もしや」と上海にいる技術担当者と営業担当者のほうに会いにいってみたら「ぜひやらせてくれ」ということになりまして。リチウムイオン電池の場合、各電池をきちんと監視・制御しないといけない。そうしたBMS(バッテリー・マネジメントシステム)技術をもっていたので、BYDに決めました。向こうも、20A(アンペア)以上の大容量電池を世に出すのは初めてなんです。非常に誠意をもって取り組んでくれています。
この2月には現地に行って、BYDオートの車も見てきました。どこかベンツに似た感じで、まだ「真心」は入ってないな、と思いましたけど、「宣伝もしないでどうやって売るのか?」と聞いたら「心配いらない。ベンツの3分の1の値段で売るから」と。彼らはガラスとタイヤ以外、ほとんどを内製しているんですが、どのパーツもブランド名を入れていないので、ほかのメーカーに売れちゃう。そうやって5年間で従業員14万人の一大企業になった。
コピーできる技術があれば、そのうち本物になります。彼らのスピードを甘くみないほうがいいと思いました。将来、一緒に組めばいろいろ面白い開発や挑戦を短期間でできそうな気がします。
――いずれは量産メーカーに、という夢はありませんか?
高岡 もちろん、ありますよ。しかし、自分のコンセプトを変えるつもりはありません。いま、ベンチャーキャピタルの類が「出資したい」としょっちゅう営業に来ますが、すべて断っています。大手メーカーとは違うやり方で大きくなりたいし、電気自動車ならそれができると思っています。
ラリードライバーとして、生きるか死ぬかを何度もくぐりぬけてきた。そういう経験を踏まえて自分なりに考えた「車とはこういうものだ」という問いかけを社会にしていきたい。少なくとも、この先10年は、いろいろと仕掛けていきますよ。