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[インタビュー編]もっと plug-in

[第5回]

「装置産業だから体力勝負という側面はある。すべてのメーカーが生き残ることはできないでしょう」

日立ビークルエナジー 川本秀隆社長



車載用リチウムイオン電池の量産で先行する日立ビークルエナジーの川本秀隆社長は、おもむろに帽子を取り出した。会社設立5周年を記念してつくった野球帽だという。ロゴをオレンジ色にして炎に模したのは「電池量産に燃える心」を表す。「うちの電池は燃えないという自信があるからこそのマーク」と笑う。業績がふるわない総合電機業界にあって、新規事業への期待とプレッシャーが双肩にかかる。どんな展望があるのだろうか。
         (2009年4月3日、東京都千代田区の日立製作所本社で。聞き手・堀内京子、高橋万見子)

 

かわもと・ひでたか 1952年生まれ。76年、日立製作所に入社。自動車機器事業部企画部長、自動車機器グループマーケティング・製品統括本部長などを経て2007年から現職
かわもと・ひでたか 1952年生まれ。76年、日立製作所に入社。自動車機器事業部企画部長、自動車機器グループマーケティング・製品統括本部長などを経て2007年から現職。

――リチウムイオン電池の新しい生産ラインを準備中ですね。

川本秀隆 現在、東海工場(茨城県ひたちなか市)の第1ラインで月間4万個(セル)を生産していますが、いま試験運転を繰り返している第2ラインは月産30万セルを製造する予定です。すでに供給が決まっているゼネラル・モーターズ(GM)の新車発売が2010年10月ですので、今秋から本格稼働する予定です。

東海工場は以前、東洋一のVTR工場でした。また、日立はプラズマディスプレー事業からの撤退を決めましたが、そこからこの4月、電池事業に五十数人が移ってきました。1日付で電池事業統括推進本部も設置し、事業グループや研究開発部門、関連会社を束ねていきます。電池関連の3社で日立ビークルエナジーを設立してこの夏で5年。現在、新しい市場の開拓と雇用の創造に総力をあげているところです。

 

――GMは経営危機にあります。電池の生産に影響は出ていませんか?

川本 ありません。GMも、再生策として環境車の開発を掲げており、これに関する投資は先送りが許されません。今も毎週のように打ち合わせをやっていますよ。

 

――累計60万セルを出荷してきた実績をアピールしていますね。

川本 日立は車載用のリチウムイオン電池に先駆的に取り組んできました。電池はものづくりそのものです。研究レベルで少数をつくるのと、月に30万セルをコンスタントに製造するのとでは風景が全然違う。

例えば、正極や負極をつくるには薄い箔に化学物質を塗っていくんですが、均一に薄く、かつできるだけ速く、幅広く塗れる技術が必要です。化学物質の粘度は天候や湿度によって日々変化しますから調整も必要です。これには半導体と同じぐらいの技術力が問われる。

幸い、日立には昔から磁気テープの製造などでノウハウの蓄積がある。これまで60万個を世に出している車載用リチウムイオン電池唯一の量産メーカーであり、携帯などの民生用リチウムイオン電池においても累計6億セルを出してリコール(回収・修理)ゼロ、という実績は大きな自信です。

また、ハイブリッド車には複数の電池を積むわけですが、われわれ1つひとつの電池の状態を把握しつつ、万が一1つが故障してもほかのセルで補えるようにするなど電池パッケージ全体を制御できるシステムも含めて提供できる強みを有しています。モーターやインバーターも含め、まさに総合電機メーカーとしての力を評価してもらっているわけです。

 

――角形の車載用電池も出始めているなかで、円筒形を保っていますね。

川本 電池としてもっとも自然な形だからです。ものづくりの過程で電池に負荷をかけたくないんです。軸心があってそこに正極、負極、セパレーター、電解質を重ねて巻き付けていく。このほうが生産速度も上がり、コスト低減にも効果的です。

 

――有望市場を目がけて、競争は激しくなりつつある一方、経営環境は厳しさを増しています。

川本 電池は、ライフサイクルで言えばまだやっと第一段階。今後、世界の情報を吸い上げて優れた電池を開発していかなければなりません。基本的に設備産業ですから、大きな投資が必要で、すべてのメーカーが生き残ることはできないでしょう。体力勝負という側面はありますね。

リチウムイオン電池は自動車だけでなく、IT機器のバックアップ電源や電車、風力発電などで生まれた電力の蓄電などほかにもさまざまな用途が期待されていますから、そうした方面についても統括推進本部を軸に着実に需要を開拓していきたいと考えています。

 

――電池やモーターで動くようになると、自動車もいずれ規格品を組み合わせるだけのコモディティー(消耗品)になる、という見方がありますが。

川本 車は、パソコンのようにはならないと思います。30年間、車とかかわってきていますが、例えばステアリング一つとっても、道路から拾えるさまざまな路面情報がそこを通じてドライバーに伝わってくる。こうした部分はメーカーや車によって違い、まさにアナログ技術のなせる粋の部分です。それが自動車の醍醐味でもあり、パソコンのようなつくり方では実現しない。

ただ一方で、テスラ・モーターズのように民生用の電池を6800個もつなげて自動車を走らせてしまう、といった、われわれではちょっと想定できないシリコンバレー的な発想で電気自動車を造り始めたベンチャーも出てきていますから、そこはせめぎあいになるのかもしれません。いずれにせよ結論は出ていないわけですから、じっくりと見極めていけばいいと思っています。

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