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[インタビュー編]もっと plug-in

[第1回]

「電気自動車は大きな地殻変動になりうる。大いなる実験と挑戦ができるのは嬉しいことです」

三菱自動車工業 益子修社長


 

三菱商事の自動車事業本部長のときに出会った益子修氏は、自信にあふれ、記者の質問に対する受け答えもクリアな人物だった。あれから6年あまり。どん底にあった三菱自動車の社長に就任し、苦労を重ねてこの7月には軽自動車をベースにした電気自動車「iMiEV(アイミーブ)」を発売するという。業界はこれまでにない販売不振のただ中だ。新たな覚悟を聞いてみた。

(2009年3月30日、東京・田町の三菱自動車本社で。聞き手・野島淳、鈴木暁子)

 

ますこ・おさむ 1949年生まれ。72年、三菱商事に入社。自動車事業本部長を経て2004年、リコール隠しなどを端緒に経営危機に陥った三菱自動車工業に常務として着任。05年から現職。                            

――普段から電気自動車を社長車として使っていますね。

益子修 昨年10月から、トラブルもなく走っていますよ。発売前にこれだけ乗った車はほかにない。静かでスムーズで、加速がいい。大人が4人乗っても、私(178cm)より大きい人が乗っても、大丈夫です。居住性が実にいい車ですよ。自信を持って販売できます。

 

――赤と白のカラーリング塗装はけっこう派手です。恥ずかしくありませんか。

益子 急に私が乗ると言い出したので、準備できなかったんですよ。恥ずかしいというより、目立つなと。とはいえ、わざわざ塗り替えるのは無駄でしょう。もう慣れましたよ。

 

――社長就任が2005年。今も厳しい経営が続いていますが、なぜ開発に踏み切れたのですか。

益子 就任当初から、これからの自動車会社はハイブリッド技術がないと競争していくのは難しいと思っていたんです。だが、社内に勝負できる体制は整っていなかった。三菱の歴史を調べていく中で、電気自動車の技術があると分かったんです。

もちろん、社内に「技術的に大丈夫なのか」「過去に失敗した理由を克服できるのか」といった反対意見はありました。しかし、電池の技術はかなり向上していたし、ベースになる軽自動車「i(アイ)」のプラットフォームが使えることが分かった。

「i」は、エンジンを後ろに積んでいて、ガソリンタンクも床下に置く設計でしたから、改造しないでも、モーターや電池がそのまま積める。これはやるべきだ、と思いました。

 

――電気自動車を出せば業績が改善すると? 

益子 目先売れる車に、経営資源を振り向けるべきだという意見がなかったわけではありません。

ですが、新しいことに挑戦しないと、会社は活性化しません。

当然ながら、新しいことをやれば矛盾も出てきます。電気自動車というのは、今まで培ったエンジン技術を否定することでもあるんですね。でも、それを乗り越えないと、新しい世界は開けない。

絶対の自信があったわけではありませんが、電気自動車に挑戦したからといって、会社が潰れることはないと思った。それくらいには耐えられるだろうと。むしろ、ハイブリッド技術がないという危機感、恐怖感のほうが大きかったですね。

もし、電気自動車の技術がなかったら、ほかにどんな環境技術があっただろうか。今、考えると恐ろしいです。間違った選択ではなかったと思っていますよ。

 

――世界的な不況で自動車業界は総崩れです。電気自動車もすぐには普及しないでしょう。会社は大丈夫なのですか。

益子 非常に難しい状態にあるのは確かです。2009年度も簡単には景気回復しないでしょう。

しかし、こういうときだからこそ、できるだけ多くの人が納得するモノ作りに取り組みたい。

将来、石油は枯渇するかもしれませんし、低炭素社会の実現も必要でしょう。エネルギーの多様化は避けて通れない。自動車が地球上からなくなることは考えられない以上、車そのものをどうやって変えるかというのは、社会的な使命です。

1908年にT型フォードが出てから100年立ちます。世の中の節目に、CO₂排出がゼロという究極の環境対応車を世の中に出して、生産台数を増やすこと自体に意味があります。

電気自動車によって、いろんな地殻変動、構造改革が起こりうる。少なくとも、騒音や公害、悪臭はなくなります。高速道路の防音壁だっていらなくなるかもしれない。大いなる実験と挑戦ができること自体、私にとっては嬉しいことです。

 

――まずは今年、2000台を販売されます。

益子 すでに2000台については販売先がおおむね決まっています。来年は5000台出します。3年後には世界で1万台は売りたい。電池の価格をいかに下げるかが課題でしょう。電池メーカーと一生懸命、努力しているところです。

国内だけでなく、海外でも実証試験が評価され、導入したいという国が増えています。今後は2020年には、輸出分も含めて、生産台数の15~20%くらいは電気自動車をはじめとする環境対応車にしたいと思っています。

 

――「iMiEV」の価格はいくらまで下げられそうですか。

益子 政府や自治体の補助金制度を利用していただいたとしても、今はまだ300万円ぐらいはかかってしまいます。将来的に補助金が減ったとしても、200万円ぐらいの負担で買っていただけるようにしたいと思っています。

 

――電気自動車については、海外販売や電池メーカーへの出資など、大株主でもある三菱商事の支援に依るところが大きいですね。グループ力頼み、というところはありませんか。

益子 お互い、得意な分野で力を発揮しているだけですよ。三菱商事に車はつくれないでしょう?

 

――ビジネスと割り切るなら、他社でもっといい電気自動車が出れば、三菱商事はそっちと組むのでは?

益子 だとしても、こちらから文句は言えないですよね。いざとなれば、スリーダイヤ(三菱のマーク)があるなどという、そんな甘いものではありません。しかし電気自動車においては、われわれは圧倒的な優位にある、と自信を持って言えます。電気自動車は新しい乗り物だけに、安全性を含めクリアすべきさまざまな課題がある。うちほど実証実験のデータを蓄積している会社はありませんよ。その優位性を保ち続けることが、メーカーにとってはいちばん大事なことです。

 

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