![]()
![]()
その「チーム」は、2007年1月のダボス会議で生まれた。
電気自動車が高いのは電池が原因だ。ならば電池はリース方式にして、電池抜きで売ればいい――。
ソフトウエア会社SAPの役員だったシャイ・アガシがそう話すと、カルロス・ゴーン(ルノー・日産CEO)、シモン・ペレス(現イスラエル大統領、当時は副首相)の2人が強い関心を示した。
9カ月後。アガシは米カリフォルニアに電気自動車のインフラづくりを進める会社「ベタープレイス」を起こす。

電気自動車を買った人は基本料金を払ってベタープレイスが保有する電池を借りる。あとは、充電したり電池を交換したりするたびに、その料金を支払っていく。
イスラエルでは、政府が支援して、ベタープレイスによる充電網の準備が始まっている。ルノーが電池交換型の車を開発し、日産が電池を供給することも決まった。
3者が協力したこのサービスは、2011年には実現する見通しだ。
イスラエル政府はアラブの原油依存から抜け出そうと、太陽光発電などの導入を進めている。ベタープレイスのモデルはぴったりだった。
同じサービスは、風力発電に力を入れるデンマークでも採用された。同社は、オーストラリアや米カリフォルニア州などでも同様の計画を進めている。
ベタープレイス日本法人社長の藤井清孝は、タクシーに目をつけた。
東京で営業するタクシーは約5万台にものぼる。1台が1日平均、約270kmを走る。
電気自動車で長距離運転はしにくいが、一定の営業区域しか走らないタクシーなら、電気自動車向きともいえる。充電設備や電池の交換設備があればよい。
「消費者に電気自動車の良さを実感してもらうには、タクシーでの普及が一番。10台に1台が電気になるだけで時代が変わる」と藤井は信じている。4月から横浜市で、実際に試験車を使って電池を交換するサービスの実験を始める。「タクシー構想」の第一歩だ。
三井物産の自動車総合戦略室長、佐藤秀之は、電気自動車の別の使い道を描いている。
カーシェアリングだ。

借り手が不特定多数のレンタカーと異なり、カーシェアリングでは、1台の車を複数の会員で使う。事前にネットなどで空き状況を確認して予約し、会費と利用時間や距離に応じた料金を払う。
車を手軽に使いたい人が多く、短い距離しか走らないケースが多い。走行距離に限界がある電気自動車にぴったりだと佐藤は思う。電気自動車の値段はまだ高いが、みんなで「シェア」すれば、そう高い料金にはならない。
三井物産は今年1月、「カーシェアリング・ジャパン」の営業を東京都内で開始。今は15台しかないが、5年後には1000台、2万人の会員を見込む。当面はガソリン車を利用するが、市場に電気自動車やプラグインハイブリッド車が出てくれば、積極的に採用していく方針だ。
佐藤は、若者の車離れは、今後さらに進むとみる。
マイカーは「豊かさ」を代表せず、走る楽しみよりも、実用性が大事。環境への意識は高まり、車の脱ガソリン化も進む――。
「電動化した自動車が新たな公共交通機関になる」
そう熱く語る佐藤の話を、「なるほど」と思って聞いていた。
東京都内で暮らす記者は2年前に車を手放した。地方に住んでいたときはあまり感じなかったが、月に数回しか乗れないのに駐車場代や保険料、税金など維持費が高すぎる。
たまに乗るなら「カーシェア」でいい。それなら電気自動車に乗るほうが、かっこいいかも……。
自分の車を持ちたい人も、多いだろう。だが、環境にいい自動車を必要なときだけ借りる、という生活スタイルは、都市に住む同世代には受け入れられやすいかもしれない。35歳の私は、そう感じた。
(野島淳)
[文中敬称略]
高橋万見子(たかはし・まみこ)
GLOBE副編集長
奥寺 淳(おくでら・あつし)
上海支局長
野島 淳(のじま・じゅん)
GLOBE記者
中川仁樹(なかがわ・ひとき)
名古屋報道センター記者(トヨタ自動車担当)
鈴木暁子(すずき・あきこ)
特別報道チーム記者(3月末まで自動車担当)
一色 清(いっしき・きよし)
編集委員。テレビ朝日・報道ステーションコメンテーター
勝田敏彦(かつだ・としひこ)
アメリカ総局記者
山川一基(やまかわ・いつき)
産業・金融グループ記者