![]()
![]()
書かれたら、書き返せ。
古今東西、記者にとって、変わらぬ鉄則だ。
民主党代表・小沢一郎が穏やかにほほえむ米週刊誌タイムのアジア版3月23日号の表紙。「一匹狼」の見出しの下に、「独占インタビューで小沢が日本をどう導き、変えるかを語る。だが、日本にその準備ができているか?」の文字が躍る。
4ページの特集記事では、「秘書逮捕について小沢は『非常に驚いた』と話した」「単に『政治資金記録の記載間違い』で、以前なら『訂正のたぐい』で済んだと述べた」などと報じた。

「特派員仲間が『グレート!』と言ってくれた」。タイム誌の東京特派員、ココ・マスターズは顔をほころばせた。
07年12月に赴任した彼女は、昨年5月から小沢へのインタビューを民主党に申し入れ続けてきた。「日本の政治に戦後最大級の変化があり得る。読者は『チェンジ』を知りたがっている」
英紙のフィナンシャル・タイムズ(FT)が小沢インタビューを掲載したのは、昨年6月。記者になって4年目、同志社大学への留学経験があり、ニューヨークから東京へ転勤して半年余のマスターズは、FTに先を越された形になった。
もし総選挙で民主党が自民党に大勝すれば、政権交代だ。長年、日本で政治取材を続けてきたベテラン特派員は「2009年の日本は、政治の節目になるかもしれない。これまでは政治の記事を書いても、本国のデスクが『退屈だ』と採用してくれなかった。日本で政権交代があれば、久々の政治ニュース。われわれ特派員にとってもチャンスだ」と話す。
六本木ヒルズ34階にあるタイム誌の東京支局。マスターズは「FTに書かれてプレッシャーを感じていた。次期首相になるかもしれない人物に、日米関係がどう変わるかも聞いてみたかった」と話した。
民主党から「インタビューOK」の返事があったのは、今年2月。FTを最後に、小沢は海外メディアの単独取材に応じていない。3月7日のインタビューに合わせ、ニューヨークからマイケル・エリオット国際版編集長も駆けつけた。
インタビューは、小沢の公設秘書逮捕の4日後に行われた。小沢は事件後、詰めかけた政治部記者らを前に会見はしたが、1対1の単独インタビューはやっていなかった。結果として、海外だけでなく、日本メディアにも「独占」で先んじることができた。
「偶然だけど、完璧なタイミングだった」
しかし、小沢はこの危機を乗り越えられるのか。次期首相の可能性について記事は冒頭、「もし、彼が――大きな『もし』だが――日本で最新のスキャンダルで致命傷を避けることができれば、なれるかもしれない」と、かなり抑制をきかせた。
……………

東京・有楽町。3月中旬、公明党代表の太田昭宏が日本外国特派員協会(FCCJ)主催の昼食会に招かれた。太田は「経済危機への日本の対応」や「公明党が掲げる五つの処方箋」などを30分以上にわたって講演した。
メモも取らずに聞いていた特派員たちの動きが急に活発になったのは、続く質疑応答だ。
最初の記者が切り出す。「過半数を維持するため、現在の連立体制で快適か。小沢秘書逮捕で、民主が勝つチャンスはどれくらいか」。太田は「選挙に勝つのは自公」「逮捕は影響あると思うが、展開は予想できない」などと答えた。
「民主党との連立の可能性を完全に排除できるのか」「公明党と民主党には政策の一部で共通点がある。新しい関係につながらないか」とたたみかけるように質問が続く。
「選挙が終わった後のことは考えない」「自民党にも民主党にもいろいろな考え方がある」と慎重に言葉をつなぐ太田。
とうとう、FCCJ会長で国際通信社IPS(本部・ローマ)のキャサリン・マキノが自らマイクを取った。「自民党との長い関係があるから、民主党と連立しないのですね」。太田の答えは「自公連立が続くのが私の目標だ」。質疑がかみ合わないまま会見が終わると、記者の間から苦笑が漏れた。
FCCJ第1副会長のティム・ケリーは「権力者に対する外国人記者の質問は、日本人記者と違う」という。「私たちには絶対に聞かなければいけない義務的質問もないし、聞けないタブーもない。読者は周辺の話に興味を示さないので、まっすぐ中心を突く。それが時に、日本メディアに先んじた報道につながることがある」
(文中敬称略)