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レベンタルさんが、「いま、最も危険な入植地はここです」と、コンピューター画面で、エルサレムの東側にある場所を示した。大規模入植地マーレアドミムの西に隣接する「E1」と呼ばれる場所だ。レベンタルさんは、コンピューターでE1地区の上空写真を見せる。「2003年、何もありません。ただの山です。2004年もなし、2006年もなし、2007年、ほらここに警察署ができた。
2008年、さらに周りの区画整理などができています。これはまだ入植地ではない。ただ警察署が建っているだけだというでしょう。しかし、広大な地域が、政府の許可を待っているんですよ。住宅が建っていない町ですよ。すでに道路のロータリーもできています」。そう言って、コンピューター上でロータリーの写真を写しだした。
「(右派)リクードは、ここに入植地をつくりたいと考えている。しかし、E1を入植地化することには米国も反対しているし、国際社会の反対も強いから、まず、警察署を建てて、その周りの道路を整備するという名目で開発を始めたのです」
2月の総選挙で、右派勢力が過半数を占め、第2勢力となった右派のリクードを率いるネタニヤフ党首が、組閣にかかっている。ネタニヤフ政権となった場合、E1への入植地建設の許可が出されるだろうか。
「この入植地ができたら、和平は終わりです。イスラエルはマーレアドミムとエルサレムを結び、パレスチナが西岸は北と南が完全に分断されてしまうからです」とレベンタルさんは言い切った。しかし、続けて、「ネタニヤフ政権になったら、そうなるのではないか、とわれわれは大きな懸念を抱いている。しかし、一方で、ネタニヤフだから、和平は不可能だと決めつける必要はない。ネタニヤフもイスラエルの首相として和平交渉に責任を持ち、米国や国際社会からも求められる。ネタニヤフもパレスチナの指導者と交渉して、和平合意に至ることができる。ネタニヤフがわれわれをあっと驚かせることはありうるだろう」と語った。
96年にラビン首相が暗殺された後、ネタニヤフ氏が首相になった。その時に、東エルサレムの南部にあるハルホマ入植地に建設許可が出て、最後は国連安全保障委員会がイスラエル非難決議を出したのに対して米国が拒否権を行使するなど、大きな問題になった。リクードが入植者を有力な支持基盤とし、さらに入植地建設を進める政策を持っていることは、公然の事実である。ネタニヤフ政権が成立し、E1建設が大きな火種となる可能性は、決して小さくはない。
レベンタルさんの話を聞いた翌日、マーレアドミムとE1を訪れた。
エルサレムからヨルダン川西岸のエリコや死海に向けて東に延びる幹線道路を挟んで、向かい合う形にある。道路の南側、つまり右折すれば、マーレアドミムがあり、道路の北側にE1がある。E1の表示はなく、いきなり「警察署」という看板が出て、道が山に向けて延びている。5分ほど上ると、かなり立派な警察署の建物がある。途中で、幹線道路をまたいで、マーレアドミム側とつながる橋がある。面白いことに、橋の入り口はガードレールで閉じられていて、橋は何の用も足さない。片方が閉じられた橋というのは、奇妙な光景である。しかし、E1が宅地化され、ここに将来、マーレアドミムのような大入植地が建設されることを考えれば、この橋が、E1とマーレアドミムをつなぐ役目を果たすことはすでに想定されているように見える。
現地を一緒に訪れたエルサレム在住のパレスチナ人の運転手は、「これ一体、何だ。もうすべてができあがっているじゃないか」と驚き、ショックを受けていた。E1は、これまでも時々、ニュースにもなっているのに、実際に何が進んでいるかは、地元のパレスチナ人さえ知らないのは、逆に意外だった。もし、近い将来に、この入植地予定地に建設許可が出れば、同様のショックをパレスチナ社会に与え、怒りに火をつけることになるだろう。
(編集委員・川上泰徳)