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インタビュー&搭乗記 線路は続くよ、どこまでも。

[第6回] 中国高速鉄道 搭乗記

北京~天津 「京津線」 の和諧号に乗る

 

中国にとって昨年夏の北京オリンピックの最大の目的は国家の威信を高め、国威を発揚することだった。その意味では、オリンピック開催に合わせて開業した北京~天津の高速鉄道「京津線」もまた同じ狙いで造られた。1964年、東京オリンピックに合わせて東海道新幹線を開業した日本の姿と重なるものがある。中国が日本型の成長モデルをひとつの目標にしていると聞けば、それも合点がいこうというものだ。

京津線の時速は350キロ。鉄輪レール式の営業鉄道では世界最速だ。私がこの「中国版・新幹線」に乗ったのは2008年11月末だった。

北京~天津の切符。片道58元だ

始発駅の北京南駅は北京中心部からタクシーで20~30分ほどの場所にある。かつてはドヤ街の中にあったというこの駅は、古い建物が一掃され、今は真新しく巨大な駅施設が立つだけだ。

首都・北京市には5つの大きな駅がある。高速鉄道の起点となった北京南駅のほか、北京近郊の地域へとつながる北京駅と北京北駅、それに東北地方からの出稼ぎや帰省の出入り口となる北京東駅、西南地域とつながる北京西駅である。

南駅のロビーは、空港ロビーを思わせる。高い天井から太陽光がとり込まれ、明るく、広々としている。布団袋のような巨大な手荷物をもった出稼ぎ労働者が多い西駅などと違って、こちらはビジネスや観光が目的と思われる旅客が多い。天津まで30分で結ばれたとあって、最近では土地が安い天津に広い家を買い、平日は北京で働き週末だけ家に帰る人も増えているという。

駅ロビーで一眼レフカメラを取り出して1枚フラッシュをたいた。すると、すぐに女性駅員が飛んできた。「撮影はだめ」という。ところがコンパクトカメラで撮影していると、注意すらされない。どうやら取材としての撮影はダメ、観光客としてならOK、ということのようだ。

2種類の車両。左がはやて型、右が独シーメンス製

改札も空港並みだ。発車15分くらい前になると、搭乗案内が放送される。搭乗口に一列に並び、順に荷物を検査機に通す。乗客は金属チェックのゲートをくぐり、指定されたホームへと歩く。

京津線には2種類の高速車両が走っている。一つはドイツ・シーメンス社製車両を改造したもの。もう一つは東北新幹線「はやて」をベースにしたものだ。シーメンス製車両の顔は弾丸型。はやて型車両はカモノハシのような顔をしている。2種類の車両はたいがい隣り合わせのホームに停車しているので、一度に見比べることができる。

どの車両にも「和諧号」と表示されている。高速鉄道や長距離鉄道は、どれもこれも「和諧号」だ。「和諧」は調和の意味を表す、胡錦涛総書記のスローガンである。だから車両にも、というのも分からないではないが、どの方面、どの車両に乗るのか、戸惑いそうでもある。

ホームでは記念写真を撮ることもできる。ただし、発車までの時間は10分もないので、ゆっくりと撮影する暇はない。「鉄道ファン」泣かせである。南駅から天津行きは10~20分おきに発車する。私が乗ったのはドイツ型車両。出発時間は午前9時30分だったが、2分早くスタートした。日本では出発が遅れることがあっても、時刻表より早く出発することはありえない。だが、中国では他でもよくあった。もしかすると到着時刻を厳守することが運転手に厳しく課されているので、運転手は早めにスタートすることで運行距離を「貯蓄」をしているのかもしれない。

ドイツ製車両の運転席。客席から見通せる

車内の感じは、東北新幹線とそれほど変わらない。スムーズに走り出し、乗り心地も悪くなかった。取材した鉄道省幹部は「京津線ではコップの水がこぼれず、タバコを立てて置いても1分間は倒れない」と豪語していたが、それも大げさではない感じだ。出発から7~8分もすると、時速は300キロを超えた。車両内に掲示されたスピードメーターには刻一刻と変わる時速が表示される。

最高時速は乗ってから約20分後。時速327キロまで出た。ちなみに北京までの復路での最高時速は333キロだった。日本で走る「はやて」の最高時速は275キロだ。ドイツ系車両のベース型も時速300キロが最高だという。中国の公称最高時速は「350キロ」。当初はすべてその速度で運行していたようだが、川崎重工業やJR東日本から「その速度では責任がもてない」と抗議されたのを受け、やや速度を落としているのかもしれない。あるいは五輪開催時のPRも終わり、長期運行に備えて無理をしなくなったか。

天津に向かう車内。ビジネスや観光目的の乗客が多い

安全を何より優先し、速度能力に余裕を残して最高時速を設定するのが日本流。これに対し、「速度を能力いっぱい出せるだけ出す」のが中国のやり方だ。その違いは、いまだに日中間の溝となっている。

北京を出発して30分で、終点の天津駅に着いた。ホームに停止するやいなや、駅スタッフが各車両に一人ずつ付いて、窓など車両の外側を雑巾で拭き始めた。ショーウインドーの商品に磨きをかけているかのようだ。

ただ、中国鉄道省が神経を注ぐのは見栄えだけでない。連日24時間体制で車両の運行設備の保守をしており、真夜中にもメーカーのスタッフが来て、車両の裏側まで点検作業しているそうだ。そこはスピードで無理をしている分、保守にも気を遣っているらしい。営業運転をしながら実験を重ねる。それが中国流なのかもしれない。(文・写真=原真人)

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