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鉄道復権? 02 環境と雇用創出。先進国の触手が動く

[Part2] クルマ社会に対抗、業界スクラム

EUの両雄・独仏はいずれ劣らぬ鉄道大国だ。ドイツが欧州最大の貨物輸送量なら、フランスは欧州随一の高速鉄道網を誇る。市場が重ならなかったので両雄は並び立ってきた。だが自由化以降、そうはいかなくなるかもしれない。フランス国鉄の長距離旅客輸送担当CEO、ミレーユ・フォージェにそう水を向けると、「いや、互いに協力しないと自動車と航空に対抗できませんよ」。
競争だけではない。協調を模索するのも「欧州流」なのだ。

フランス国鉄、ドイツ鉄道、ユーロスターなどの鉄道9社連合は、各線が連結する拠点駅に各国語を話せる職員を配置し、到着前に車内の乗り継ぎ案内を各国語で放送している。近く共通ウェブサイトを立ち上げ、予約システムを共通化すれば、目的地までの最適ルートを選んで予約から発券までできるようになる。「継ぎ目のないサービス」を提供することで航空業界に対抗する戦略だ。

鉄道事業者でつくる欧州鉄道会社共同体(CER)はここ数年、「外部費用の内部化」という難解な言葉を掲げ、欧州委員会にロビー活動を繰り広げてきた。平たく言えば「社会への迷惑料の徴収」だ。
自動車や鉄道などの交通手段を用いて移動すれば、騒音や渋滞が起こるし、排ガスや二酸化炭素(CO2)が出る。こうした社会が被る外部費用(コスト)を、利用者に負担させる仕組みである。要は、鉄道よりこのコストが大きい自動車輸送に多くの迷惑料を払わせることで、鉄道の競争力を高めようという狙いなのだ。

さすがフランス、国鉄乗務員の制服もオシャレだ=パリ・リヨン駅、後藤絵里撮影

欧州委員会は昨年7月、「グリーン交通法案」を理事会に提案した。柱の一つが輸送トラックへの外部費用の課金だ。CERは成立を強く要望している。だが昨年9月のリーマン・ショックで経済危機が深まり、加盟国の間で民間の負担が増すのを嫌がる声が強まる中、結局、年末の閣僚会合では合意できなかった。
「法案は死んではいない」とチェコ鉄道テストセンター出身のCER副理事長リボル・ロックマンは語気を強める。中東欧などのEU新規加盟国の多くは今も圧倒的にクルマ社会だ。高速鉄道を走らせるにはカネもかかるし技術も必要だが、中東欧諸国にはどちらも足りない。自動車に環境負荷を負担させる仕組みができれば、こうした国でも自動車から鉄道への移行(モーダルシフト)が始まるだろう。
EUという「壮大な実験」はいま、経済危機下のユーロ急落や失業急増という試練に直面している。共通の金融政策と各国の財政政策を調和させることの難しさも露呈した。統合の未来には陰りも見えている。
そのなかで、国境を越える高速鉄道網が生まれ、人々の往来が活発になれば、統合への長く、険しい階段を上るのに大きな糧となるだろう。

(文中敬称略)

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