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なぜ、学ぶのか? 01 古典語の土台、学ぶ喜び。今に生きるヨーロッパの知

[Part4] 学部教育の4年間、再構築のとき

大学の卒業生に、企業はどんな力を求めているのか。
日本経団連の04年の調査によると、企業が大学教育に期待することのうち、「教養教育を通じて学生の知識の世界を広げること」は、文系で12項目中6位、理系で8位だった。文系学部への期待は(1)知識や情報を集めて自分の考えを導き出す訓練(2)理論に加えて、実社会とのつながりを意識した教育――などだった。
この調査で見る限り、企業は直接仕事に役立つ力の育成に期待している。以前に比べて、会社自体が自ら社員を育成する余裕をなくし始めていることが背景にはある。

 

それを象徴するのが、最近、大学教育に向けられている「社会人基礎力」という言葉だ。
主体性、実行力、課題発見力、創造力、情報発信力など12項目の「基礎力」を設け、学生が大学の授業でどれだけ伸ばしたかを評価しようという試みだ。文部科学省ではなく、経済産業省が「大学を卒業しても社会人の能力が不足した状態にならないように」と、大学に向けて提唱し始めた。
07年度からモデル事業が始まり、社会人基礎力をつける授業を試みる大学には補助金が出る。08年度には大阪大、金沢工大、愛知学泉大など9大学がモデル事業に参加している。
同省は「社会人基礎力育成グランプリ」という催しまで始めた。学生チームが授業の内容を発表するもので、今年2月に予選、3月には決勝大会を開く。約40の大学が参加する見込みという。

愛知学泉大学長の若林努は「教養と専門の垣根を崩していく。実学に根ざし、専門知識を活用する能力を育てたい。教育目標にしたことで、教員自体の意識も変わり始めている」と語る。
しかし、学生の就職活動は3年半ばから4年まで続く。大量の学生の受け皿になる企業による「青田買い」と、不況下での学生の「企業詣で」が激化するなかで、本当に企業が期待するような基礎力や教養が大学でつけられるのか。深刻な問題だ。

東京・乃木坂の日本学術会議。昨年12月19日、大学教育のコアカリキュラムづくりを検討する会議が開かれた。自前でカリキュラムを作れない大学にモデルを示す狙いがある。

会議では、冒頭、大阪大教授の小林傳司が「教養的な知識よりも専門知識が重視される社会になったが、『教養』の可能性がないかというとそうではない」として、「高度教養教育」という考え方を提案した。
一定の専門的知識を身につけ、社会にまもなく出て行く学生に対して、専門教育以外に必要とされる知識や能力を与える教育、という意味だ。全学部の後期~大学院前期の学生を対象にすることを想定している。
小林は「専門が見えてからこそ、社会にとって必要なことを学ぶべきだ」と語る。

学術会議では今回、教養教育の分科会の設置を決めた。専門教育と教養教育が互いにどう補うかがテーマだ。
検討委員会委員長の北原和夫(国際基督教大教授)は今回の検討を「日本の大学の再出発」ととらえる。「専門を超え、学士課程でつける力を提示したい。教養教育の場合、戦略的にカリキュラムをつくり、4年間通して学ぶことが不可能ではない」と話す。
旧制高校の解体、戦後一般教育の形骸(けいがい)化と崩壊。教養教育の土壌の希薄さ。そして、学部教育そのものの不透明な行方――。日本の教養教育はどこへ向かうのか。
早稲田大教授(教育社会学)の吉田文は「今は、4年間のプログラムをどうつくるかという段階。1年次の学生にとって大学での学習に必要なことを学ぶ初年次教育などの比重が高くなっている。学生の多様化への対応が認識されるようになり、準備教育的な教養教育が高まっている。さらに、環境や情報技術など、現代的な課題に対する共通の認識や理解が必要で、それが新たな教養教育になる可能性がある」と展望している。
(文中敬称略)

取材記者略歴
郷富佐子(ごう・ふさこ)
66年生まれ。社会部、マニラ、ローマ特派員などを経てGLOBE副編集長。
築島稔(つきしま・みのる)
70年生まれ。社会部で大阪府警を担当。金沢総局を経てGLOBE記者。
山上浩二郎(やまがみ・こうじろう)
58年生まれ。社会部で教育問題を担当。論説委員などを経て編集委員。

 

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