
「それは最良の時代、そして最悪の時代である。2014年、人々は前世紀には想像もしなかった膨大な情報にアクセス可能になり、誰もがメディア空間に参加する。マスコミは姿を消した。20世紀的なニュース機関は過去の遺物になった」
そんな刺激的なナレーションで始まり、メディアの近未来を大胆に描いたフラッシュムービーが04年、ネット上で公開され、メディア関係者の注目を集めた。「EPIC2014」(www.robinsloan.com/epic/)だ。

主役は、08年にグーグルとアマゾンが合併してできた架空の企業「グーグルゾン」。グーグルが集めたネット上の膨大な情報を、アマゾンのもつ顧客情報と結びつけ、個人の好みに合わせたニュースや広告を配信する。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)社はグーグルゾン社を著作権法違反で提訴するが、グーグルゾンが勝訴する。そして2014年、グーグルゾンは個人向け情報収集送信システムを進化させた「EPIC」を発表。一方のNYTはネット配信をあきらめ、エリートと高齢者のためのニュースレターと化し……という筋立てだ。
作者のひとり、ロビン・スローン(28)はいま、サンフランシスコの番組ネット配信会社で働いている。
あれから4年がたちましたが。
「伝統的メディアがこれほど健闘するとは思わなかった。NYTはがんばってるよ。ただ、グーグルの成長のほうがもっと速かった」
EPICに似たものはできましたか。
「(自分の興味に関連した情報を自動配信してくれる)RSSフィードなんかかな。伝統的メディアは自分たちを通してみんなに同じものを見せてきたけど、EPICは個人の<頭の中の地図>にあわせて情報を流すメディアだ」
もうマスメディアは必要ない?
「そうは言わない。今回の米大統領選がいい例だ。オバマ当選の瞬間、多くの国民がテレビにクギづけになった。ただ、マスメディアの比重は小さくなる。誰もが発信できる時代、一般の人の力は侮れないよ。だれもウィキペディアが百科事典を超えるなんて信じなかったが実現したのと同じだ」
実際、米国では伝統的メディアの人員削減が続いている。スローンは「新しいモデルを探す必要がある」と指摘する。

たとえば「トーキング・ポインツ・メモ」(www.talkingpointsmemo.com)。政治コラムニストが主宰するこのブログは、広告料収入で記者を雇う。07年、ある地方紙の記事をもとに、ブッシュ政権が意に沿わない地方の検事を次々に解任している事実を全国の読者情報をもとに追及、ついには司法長官を辞任に追い込んだ。
あるいは、「Spot.Us」(www.spot.us)。米国の非営利団体が運営する。深い取材にもとづく調査報道を求める市民のニーズと、隠されたニュースを発掘したいフリージャーナリストらのニーズとを引き合わせる。記者は取材のテーマを提案し、共感する市民からの寄付で、対価を得る。
大統領選でも、ネットジャーナリズムは無視できない影響力を発揮した。
ネットを活用する。その先に、新たな可能性ものぞく。
(文中敬称略)
