Editor's Note 編集長から

[臭いと匂い]





20年近く前の話ですが、大学時代に留学していたロンドンを久しぶりに再訪したときのことです。「チューブ」の愛称で呼ばれる、あの窮屈な地下鉄の車両に乗り込んだとき、甘ったるい香りが漂ってきました。乗客のつけている香水のにおいでした。その瞬間、ああロンドンに帰ってきたのだ、と青春の日々がなつかしくよみがえったのです。


記憶に残るのは、よいにおいだけではありません。昭和30年代をノスタルジックに描いた映画「ALWAYS 三丁目の夕日」を見ていて、物足りなく思ったのは、画面があまりにもきれいで、高度成長前期の日本が持っていた一種の猥雑さが感じられなかったことです。


地方都市で過ごした子供時代を思い出すと、下水道が完備せず、衛生状態も悪かったあの頃は、あちこちで異臭に悩まされました。その臭いを克服することも、日本が先進国に追いつく物差しだったのです。


臭い、匂い、香り。どういう漢字で表現するかで、印象はだいぶ違います。その不思議な世界を特集しました。


(今回の特集は「香り」です)

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