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映画クロスレビュー

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』 - 「隠れホームレス」の母子に迫る現実

[第139回]

© 2017 Florida Project 2016, LLC.

藤えりか記者によるショーン・ベイカー監督へのインタビューをGLOBE「シネマニア・リポート[#92]に掲載

Photo:Semba Satoru


みどころ

6歳の少女ムーニー(ブルックリン・K・プリンス)は定職のない母ヘイリー(ブリア・ヴィネイト)と米フロリダの安モーテルで暮らす「隠れホームレス」。きらびやかなディズニーのテーマパークを仰ぎ見つつ、同じモーテル住まいのスクーティ(クリストファー・リヴェラ)らといたずら三昧だ。管理人ボビー(ウィレム・デフォー)は時に叱りつつ温かく見守るが、母子の困窮がきわまり、厳しい現実が訪れる。アカデミー助演男優賞ノミネート。(2017年、米、ショーン・ベイカー監督、12日から順次公開)

「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」の公式サイトはこちら




© 2017 Florida Project 2016, LLC.


Review01 大久保清朗 評価:★★★▲(満点は星4つ、▲は半分)


画面から伝わる体温と鼓動


まぶしい陽射しが子供たちの汗ばんだ肌を輝かせる。つばを飛ばしあったり、空き家を放火したりと蛮行を繰り広げる彼らは、フロリダのモーテルを住みかとする小さな獣たちのようである。豊かさから遠く離れた場所で生きる彼らの鼓動に、映画はそっと手を当てる。画面から体温が伝わってくる。


前作『タンジェリン』で、ショーン・ベイカーは、ロサンゼルスに暮らすトランスジェンダーの娼婦たちの波瀾(はらん)万丈な一日を、結末に向かって一直線に描いた。対して住所不定の母娘を描いた本作で、挿話は緩やかにより合わされ、一見脈絡がない。アイスや、通り雨や、夜の花火などとともに、彼女らのひと夏の幸福感は永遠に終わらないのではないかと錯覚させる。だがそれはあっけなく断ち切られる。


クライマックスで、友だちのもとを訪れる少女を演じるブルックリン・K・プリンスが胸を打つ。彼女の目から流れる大粒の涙。そこには夏の終わりと夢からの目覚めの悲しみが凝縮している。そして映画の始原にあったであろう、映画を撮ることの生々しい息づかいにあふれているのである。


モーテルの管理人を演じるウィレム・デフォーの存在感が、本作に確かな風格を添えている。



Okubo Kiyoaki

1978年生まれ。映画評論家。山形大人文社会科学部准教授。専門は映画史。訳書に「不完全さの醍醐味 クロード・シャブロルとの対話」。



(次ページへ続く)

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