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映画クロスレビュー

『ラブレス』ー「愛」の欠落した世界 ロシア監督描く

[第138回]



Review02 クロード・ルブラン 評価:★★★★(満点は星4つ)


「エゴイズムの罠」への抵抗


ロシアという国やそこに住む人々の精神的ポートレートを描く試みは、長らく続いてきた。19世紀と20世紀初めに何人もの作家が試みを重ね、その結果たどり着いたのが、ロシア人は陰うつだ、という考えだ。 この作品を見ると、ズビャギンツェフ監督も同じロシア観を抱き、ロシア人の運命を悲劇としてとらえていると思いたくなる。映画で描かれた社会が異常に黒く、声を失うほどだからだ。しかし、『ラブレス』はただの風刺劇ではない。テーマには普遍的な響きがある。


膨らんだエゴイズムのせいで、愛情を放棄することが人生のルールの一つになったのは、ロシアが一足早かったとしても、今やどこも同じだ。監督は並外れた技量でその様子をフィルムにおさめ、観客が映画の登場人物と同じ罠(わな)にはまらないように、心に反発や拒絶を起こそうとしている。


作品を直視すれば、抵抗の気持ちは湧いてくる。ドストエフスキーの作品で読みとれるような憤怒を監督が抱いていることも感じられる。 しかし、そこで疑問が浮かぶ。今のロシア人に抵抗する力があるだろうかと。現在の社会状況を考えると、自らの黒い運命を前にして、ロシア人はただあきらめるだけ。むしろそう考えてしまう。



Claude Leblanc

1964年生まれ。フランスのジャーナリスト。仏クーリエ・アンテルナシオナル誌編集長、ジューヌ・アフリック誌編集長などを経て、ロピニオン紙アジア部長。

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