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映画クロスレビュー

『ポルト』 異国でひかれ合った「よそ者」

[第132回]

『ポルト』より © 2016 Bando a Parte – Double Play Films - Gladys Glover – Madants

ゲイブ・クリンガー監督へのインタビューをGLOBE「シネマニア・リポート[#63]」に掲載

インタビューに応じるゲイブ・クリンガー監督=仙波理撮影





















みどころ

恵まれた家庭に育ちながら家族と折り合いが悪く、ポルトガルの港湾都市ポルトで臨時雇いの仕事を転々とする米国人ジェイク(アントン・イェルチン)。ある夜、考古学を学ぶフランス人留学生マティ(ルシー・ルーカス)と出会い、「よそ者」同士ひかれ合って一夜の関係を結ぶ。翌日、彼女の恋人ジョアン(パウロ・カラトレ)の存在を知るが、ジェイクはつきまとう。ジム・ジャームッシュが製作総指揮。(2016年、ポルトガル・仏・米・ポーランド、ゲイブ・クリンガー監督、全国順次公開中)




『ポルト』より © 2016 Bando a Parte – Double Play Films - Gladys Glover – Madants



Review01 大久保清朗 評価:★★★(満点は★4つ)


「時間の外」へ抜け出す


恋は時間をまどわせる。『アニー・ホール』から『(500)日のサマー』まで、時制を自在にあやつりながら、愛の秘密を追求する恋愛映画が存在する。無言で見つめ合う2人の男女の横顔から初の長編劇映画『ポルト』を始めたゲイブ・クリンガー監督もまた、その系譜に連なろうとしている。時間を往還しつつ、彼はこの冒頭に向けて物語を収斂(しゅうれん)させていく。


だが、この映画の隠れた主人公は、ポルトという土地そのものである。ポルト出身のポルトガルの巨匠オリヴェイラはたびたびこの地を舞台とした映画を手がけたが、晩年の『アンジェリカの微笑み』が想起される。ここでは、生と死を超越した愛が描かれていた。


『ポルト』のなかで、プルーストが引用される。『失われた時を求めて』で知られるこの小説家は、未来は現在と過去の断片をもとに意志が築きあげるものだと書いている。「時間の秩序から解放された瞬間」に、人間のなかで死んだかにみえた真の自我がよみがえるというのだ。そうした人間は未来に訪れる死も恐れない。「時間の外に位置している以上、いったい彼が未来の何を恐れることがありえようか?」(第7編「見出された時」鈴木道彦訳)


主人公ジェイクを演じたアントン・イェルチンは、この映画の出演後、不慮の事故で急逝した。だが、たとえそれを知らずとも、彼は、マティという女性と一期一会の邂逅(かいこう)を経て、「時間の外」へと抜けだしてしまったかのような錯覚を覚えてしまう。



Okubo Kiyoaki

1978年生まれ。映画評論家。山形大人文社会科学部准教授。専門は映画史。訳書に「不完全さの醍醐味 クロード・シャブロルとの対話」。



(次ページへ続く)

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