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映画クロスレビュー

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[第124回]『海は燃えている〜イタリア最南端の小さな島〜』

命をかける絶景の島

(公式サイトはこちらからどうぞ)



みどころ

イタリア最南端のランペドゥーサ島は、少年サムエレらが手作りのパチンコに興じ、海に出る練習を続けるのどかな漁師町。同時に、欧州をめざすアフリカや中東からの難民や移民がたどり着く玄関口でもある。島の医師はサムエレの弱視の左目を治療する傍ら、すし詰めの小船で渡航してきた難民たちの検視や治療を続け、心を痛める。ベルリン国際映画際で金熊賞のドキュメンタリー。(2016年、伊・仏、ジャンフランコ・ロージ監督、11日から全国順次公開)





Review01 一青窈 評価:★★★★(満点は★4つ)


そこに生まれた運命


時々むしょうに別世界が見たくなって一人旅をする。フィリピンのカオハガン島、イースター島、アフリカのツンザ村。地元の生活を垣間みたくて、旅先から少し足を延ばすのだが、この映画の監督は実際にイタリアのランペドゥーサ島に住み、現地で唯一の医者や子どもに密着して得た話をベースに映画を撮り下ろした。 旅行者では到底知ることのできない事実に迫っていて、ドキュメンタリーなのだが、物語としてとても美しく、鋭くてつらい。


難民救助隊が無線でボートピープルの助けを乞う人に語りかける際、“my friend”という英語を使ったのがとても印象的だった。そう、隣人は友人だ。その友人の目がうつろで、宙をさまよっていた。船の上で長い旅を乗り越えてきた彼らは、なぜ自分がこのような目にあうのかという答えの出ない問いに戸惑いを超え、諦めも超え、ただ心は悲しみにあふれていた。周りにはまばゆいほどの高い空と青く澄んだ海が在り、それとは正反対に果てない苦難がこの世界には広がっていることをこの映画は淡々と示す。 以前にヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗さんにお願いして難民の方に接見させて頂いた事がある。民族紛争に巻き込まれ、亡命してきた青年だった。彼もこの映画に登場する女性も子供も、誰にも罪はない。ただそこに生まれたという運命を背負っているだけだ。運命の重さを知ることのできる作品。観て欲しい!



Hitoto Yo

1976年、台湾人の父と日本人の母の間に生まれる。2002年、シングル「もらい泣き」でデビュー。代表曲に「ハナミズキ」など。11日公開の映画『ママ、ごはんまだ?』主題歌の新曲「空音」が8日より配信スタート。




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