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映画クロスレビュー

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シネマニア・リポート Cinemania Report [#26] 藤えりか

英米ドローン攻撃の現実に取り組んだコリン・ファースらの毅然~『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』


出資者の変更要請をも突っぱねたとは頭が下がる。熱心な人道支援でも知られる英俳優コリン・ファース(56)らが映画製作に乗り出した第一弾、英映画『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』(原題:Eye in the Sky)は、対テロ戦争の名のもと、世界で日々起きている現実について問いかける。23日の公開を前に来日したコリンと二人三脚のプロデューサー、ジェド・ドハティ(58)に東京でインタビューした。




© eOne Films (EITS) Limited

作品の舞台は英国、米国、ケニア。ロンドンの常設統合司令部で司令官を務めるキャサリン・パウエル大佐(ヘレン・ミレン)はフランク・ベンソン中将(アラン・リックマン)らと英米合同の「テロリスト捕獲作戦」に着手、ソマリアのイスラム武装勢力「アル・シャバブ」の一員となった英国籍の白人女性スーザン・ダンフォード、別名アイシャ・アル・ハディ(レックス・キング)に狙いを定めていた。ナイロビでの彼らの隠れ家を、小さなハチドリやカブトムシの形をした米軍の小型ドローン(無人機)のカメラで監視、送られてくる映像を見守るうち、大規模な自爆テロ計画を察知する。攻撃を準備していると、その射程圏内で地元の少女アリア(アイシャ・タコウ)がパンを売り始める。交戦状態にない友好国であるケニアで、テロを防ぐため少女を犠牲にしてでも攻撃するか、少女を守ってテロリストをみすみす見逃すか。ナイロビから遠く離れた英米の安全な密室で、軍幹部や政府高官らが電話やネットを通じて議論をヒートアップさせてゆくーー。

© eOne Films (EITS) Limited


オバマ米政権は今年7月、米軍のドローンによる攻撃で2009~15年、イラクやアフガニスタンなどを除く非戦闘地域で民間人64~116人が巻き添え被害により死亡した、と発表した。ブッシュ前米政権から引き継いだ対テロ戦争において、自軍の被害を最小限に食い止めるためにも地上軍を引きあげて、全地球測位システム(GPS)によって地球のどこからでも攻撃できるドローンを活用してきた結果だ。市民団体などは、民間人の死者数はもっと多いはずだとみている。


映画はその現実をぐさりと突きつけた。なぜ、こうした映画を製作することになったのか。インタビューで尋ねると、ジェドは5年前にさかのぼりつつ語り始めた。

プロデューサーのジェド・ドハティ=仙波理撮影


英レコード産業協会会長のジェドは、米ソニー・ミュージックエンタテインメントの会長兼最高経営責任者(CEO)を2011年に辞し、古くからの友人で政治的な考え方も合うコリンと映画製作会社「レインドッグ・フィルムズ」をロンドンで創業、2012年に法人化した。「コリンと私は『いまの世界に影響を与える社会問題に取り組む映画をつくろう』『有意義で大事な、それでいてエンターテインメント性のある映画をつくろう』と決めた」とジェドは語る。


そうしてジェドは2012年、今作の脚本を書いたガイ・ヒバート(66)に会った。ドローンが年々小型化・巧妙化していることをパリの武器見本市で目の当たりにしたのを機に、「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるのか?」という心理学や倫理学の思考実験「トロッコ問題」の要素を加えて書き上げた、とガイは詳しく説明した。ジェドは「将来を予測するような脚本だと感じた。私はすっかり気に入り、脚本を夜通し読んでコリンに送った。彼も大いに気に入っていたよ」。


そこへ2013年、ドローン攻撃の誤爆で米国人が死亡した、とオバマ政権が初めて公表したことがニュースで流れた。コリンはジェドに電話をかけてきた。「あの脚本、どうなった?」。ジェドはガイに電話をし、「映画化権を譲ってほしい。コリンと私で必ず映画にする」と伝えた。


ジェドは言う。「私自身、これは重要な問題だと感じ、我々の映画第一弾のテーマとすべきだと考えた。当時、一般の人たちの多くはドローンについてさほど知らなかった。それまで米軍は『我々はテロリストを殺傷しているだけだ』という説明に終始していた。もちろん我々は、それを信じてはいなかった。そんなことは不可能なのだから」「いまは世界中、画面や電話、スカイプを通してどことでもつながる。今日の戦争は、世界中の意思決定者が遠隔操作で指揮しているということだ」

© eOne Films (EITS) Limited
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