
[みどころ]
身寄りがなく、読み書きもおぼつかないアラブ系フランス人青年のマリク(タハール・ラヒム=写真上)は、傷害罪で禁錮6年の判決を受け、フランスのとある刑務所に入る。塀の中は様々な民族や宗教のグループが混在し、最大勢力のコルシカ系マフィアに支配されていた。看守ですら逆らえないボス、セザールの命令で、マリクはおののきながら別の受刑者を殺すことに。マフィアの手下になりつつ、刑務所で読み書きを覚え、仲間をつくり、闇社会の人脈を築く。そのうち、マリクは自分で生きていく技を身につけ、セザールのもとを離れる決断をする。セザール役のニエル・アレストリュプ以外は大半が無名の俳優。銃撃戦なども迫力十分だ。(東京で公開中。全国で順次公開)


犯罪まみれの世界を泳ぎ切る、知恵を身につけ成長する青年の物語。そう聞けば、古今東西いくつもの映画が頭をかすめる。

従来の映画とはかなり趣の異なる「殺人」が作品の肝になっている。ぎこちなく粗野な殺人で、殺した本人が震えている。彼が震えるのは悲しみ、安(あんど)、それとも怒りからなのか。一部始終をみてもわからない。暴力に立ち会うとこんな感覚になるのだろう。
セザール役のニエル・アレストリュプの演技が素晴らしい。無言の場面が多いのに、生まれつき生死を支配してきた人のようだ。マリク役の新人タハール・ラヒムは何を考えているのか不可解だ。監督の狙い通りだろう。思いを伝えようとしすぎる映画や俳優は多いが、ミステリアスな表情こそ多くを伝えるものだ。
マリクがどんな人間になったのか、考えるとこわくなる。刑務所で経験を積んだ彼は、再び街に出る。
1942年生まれ。67年からシカゴ・サンタイムズ紙の映画評論家。
75年にピュリツァー賞受賞。
全米向けの映画番組の司会や各種映画祭の審査員も務める。
(文中敬称略、作品の公開情報は掲載当時のものです)
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